カテゴリー「映画・テレビ」の1000件の記事

2023.01.23

「非常宣言」

https://klockworx-asia.com/hijyosengen/

機内感染のパニック映画。公開されたのは2021年だから、極めてタイムリーだったと言える。
映画ではなく現実でも、客船の寄港を巡って現実のドラマが繰り広げられたのが記憶に残っているが、本作は舞台を燃料切れで墜落の可能性がある旅客機に設定することで、客船の事件よりもさらに緊迫感とスピード感を持たせている。

お話の方は、感染症という災害で起こりうる葛藤とドラマをすべてつぎ込んでなお、破綻なくまとめ上げるという力技を駆使しているのに、そういう力みを感じさせないスムーズな話の運び。作り手の高い技量が感じられる。

万策尽きたあとに乗客たちが一致して出した結論が、現実には決して起きないがいかにも起こりそうな落としどころで、踏み切っているのがよい。とはいえ、たしか911のとき米議会か大統領官邸に突っ込もうとした旅客機を乗客たちが命を懸けて別の場所に墜落させた歴史的事実があるので、覚えている人には多少割り引いた感じにはなる。

それを含め、本作は様々な要素を寄せ集めて緻密に計算されているため、却って感動のポイントを絞りにくい印象もある。
欲を言えば、なにかもっとぎらつくような突出した人間性の発露が欲しかったかもしれない。もちろん、地上で焦りを募らせる刑事の行動がそれだと言うこともできるのだが、どうもその決断までのプロセスが少し弱かった。いろいろ詰め込み過ぎの弊害なのかもしれない。

すごいけれど、たぶん記憶には残らない。そういう作品に思えました。ほんと傑作を作るのって難しい。

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2023.01.15

「カンフー・パンダ: 龍の戦士たち」

https://www.netflix.com/title/81227574

シーズン2全12話

パンダと熊の道中をコメディタッチで描いて安定の面白さ。シーズン2の舞台はインド・・なのだけど他にも南洋の島やらアステカ文明風の何かが出てきて目を楽しませてくれます。

子供向けということもあって色彩が鮮やかで、思わず目を奪われます。中でもカエルを擬人化したキャラクタの造形と色彩が秀逸。パンダや熊の地味な色や形と好対照です。

カンフーパンダのポーは相変わらずのずっこけキャラの役回りですが、ずっこけながらも寛容と忍耐を示して大勢の人々をまとめる立ち位置です。そして熊のルテーラの成長がシーズン2のお話の主軸に来ます。今回、積年の敵であるイタチ兄妹についに一人で打ち克つのですが、彼女は彼らを殺さずに放してやります。

4つの武器もとうとう揃ったところで、世に災厄を齎すそれらを破壊するために、最終目的地イングランドへと旅立ちます。ポーの義理のお父さんの意外な過去の因縁で、次の道中は新たな敵、海賊との闘いになるのでしょうか。そして旅の終わり、イングランドではもちろん、放してやったイタチ兄妹との最後の決着が待っていることでしょう。

話の展開や登場人物達の意外な綾が面白く、絵の良さもあって、毎回次が楽しみな作品のひとつになりました。

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2023.01.08

「嘘八百 なにわ夢の陣」

https://gaga.ne.jp/uso800-3/
 
え何これ。お笑いなのに最後泣かせちゃうのこれ。泣いちゃいましたよ。正月からいい話聞いたな。そんで最後の最後に全部仕掛け屋の企みつまりうそぴょーんていう種明かしをちょっとだけ。ずるいぞー。
 
こういう話にぴったりの言葉がそういえばありましたよ。
 
「嘘から出たまこと」
 
三年目の今年も、このシリーズの良さが巧みに織り込まれて、いい味に仕上がってました。
 
 
価値とは、という問いは気軽に言えそうで、その実、難しい。普段の生活ではとりあえずの方便として金額に換算して考えがちなそれが、実は、人が見る様々な夢の値打ちであって、状況や経緯、つまりは物語の如何によってどのようにでも変わり得るということを、本作では、手間暇かけて文脈を練り上げた頂点の舞台で、あやしげな贋作屋の口上を借りてきっぱりと言わせている。
 
前二作では、やや曖昧にも見えたこの点を、三作目の今回は鮮やかに言い切っている。贋作と人は呼ぶけれど、数百年前にその器に込められた思いと、今日ただいまの人々の思いとに真贋の違いはないということを、この贋作屋は己の身命を賭して発語している。
素晴らしいです。
 
そして、その物語を整えて盛り上げて見せるのは、贋作屋のちょっとしたおまけ、マーケティングスキルですよと最後にウインクして見せる。憎いですね。さらに、全部が仕組まれた予定調和でもなく、関わる人々の微妙な綾が織り込まれて、偶然性とも共鳴している。
 
毎年初めにこのシリーズを見られるのは大変幸せだなあとつくづく感謝しております。来年は台湾ですかそうですか。平和な気持ちで四作目を見られるよう願っております。

 

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2023.01.03

「つみきの家」

https://amzn.to/3vzfpwE
 
amazon Primeで。12分ほどの小品。
絵本の原作がある。
 
年老いた男がひとり、小さな水上ハウスに住んでいる。水は年々上がってきていて、床が浸水するたびに、男は屋上に煉瓦を積み増して上へ上へと引っ越していく。
 
そんなある日、ふとしたことで床に開けた魚釣りの穴から愛用のパイプを落としてしまい、それを切っ掛けに、床の穴から穴へ辿りながら、男は深く潜っていく。それは男の人生の様々な記憶のステージを遡っていく旅でもあった。
 
過度に感傷的になることなく、子や孫、そして在りし日の妻や、若かった自分達を思い出していく、ほのぼのとした絵で綴る思い出の一日。そういった趣の小品でした。
 
このコンセプトの作品はたくさんあると思うけれど、本作は水面が上がるにつれて上へ伸びていく住まいというアイデアが秀逸です。水面下に沈んだ古い床ひとつひとつに降り立つたびに、そこでのかつての生活が思い起こされる、胸を打つ仕掛けがすばらしい。

 

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2023.01.02

「岸辺露伴は動かない 第1期」

https://amzn.to/3YXQ397
amazon Primeで。全3話
 
役者それぞれの個性がこの荒唐無稽なお話によく合っていておもしろい。
 
第3話 DNAという話は、ほのぼのしてよかった。といっても、わりとありがちなストーリーではあるのだけれど。ひょっとするとブラックジャックあたりにネタ元があるだろうか。
 
早回しで見ても大丈夫そうだけれどアマプラにはその機能がなさそうなのがちょっと残念。

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2023.01.01

「ナイブズ・アウト: グラスオニオン」

https://www.netflix.com/title/81458416
 
NETFLIX
 
ダニエル・クレイグを看板にしているので、一応見るのだが、一作目と比べるともうひとつ。基本的に権力者や金持ちの悪事を世界一の探偵の力を借りて庶民が暴くカタルシスといったあたりがシリーズのコンセプトのようなのだが、本作のやられ役の金持ちは頭も悪いし行動もずさんだしで、見るに堪えない。悪役が強く緻密で周到であればあるほど面白くなるタイプの作品なのに、その基本が弱い。
 
まあ、時間があったら見てもいいか、くらいでしょうか。
 
ただ、ちょっと面白いことがひとつあって、本作にはこの似非金持ちの次なる大儲けの種として個体の水素燃料が出てくるのだが、欧米の人間が水素エネルギーをなんとなく敬遠しているのが感じられたこと。ひょっとするとヒンデンブルク号がいまだに社会全体のトラウマになっているのかもしれない・・んなわけないか(笑

 

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2022.12.29

「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」

https://www.20thcenturystudios.jp/movies/avatar2
 
14年前、最初のアバターを見たとき、鳥肌が立つほど感動した記憶がある。今年、それ以上の感動を再び味わえるとは思わなかった。幸せです。
 
しかも本作は、一作目で作品世界の背景を描くために使った尺を全部物語のために投入して、前作を上回る世界観、人間観を描写して見せている。素晴らしいの一言に尽きます。
 
美しい海と色鮮やかで多様な生き物たち。前作の森の生き物たちの描写も素晴らしかったけれど、本作は海に造詣の深いキャメロン監督が本領を遺憾なく発揮している。想像を超える煌めきがある。
 
そして何より、この物語は人の生き方についての示唆に富んでいる。前作にはなかった二人のキャラクタ、元海兵隊大佐の記憶を持ったアバターと、大佐の息子でこの星でナヴィたちと一緒に育ったスカイ・ピープルの子ども。アバター自体もナヴィから見れば異質だが、この二人はそれ以上に奇妙で捩れた存在だ。
 
当初ははっきりしていた善悪・敵味方の境が、この二人によって曖昧になり、様々なイメージが呼び覚まされ、物語を意外な結末へと導く。
 
スカイ・ピープルがこの星へやってくる大きな理由が明かされた以上は、この襲来はずっと続くのだろう。もし次作があるとして、そのときあの大佐は一体どういう行動を取るのだろうか。
 
世界には善悪はなく、ただ互いの利害と生き方の異なるモデルがあるだけだ。作り手はそう言っているようにも見える。様々な立場があり衝突がある中で、家族という小さな単位こそが、互いに認め合うことができる共通点だと謳い上げている。物語の中心に位置する2つの家族の関わりと葛藤が、本作を単に美しいだけに留まらない普遍性を持ちうる作品に押し上げている。
 
さて、前作で英雄となったジェイクの家族は、本作では放浪の身に落ち、苦難の闘いで長男を失いながらも、最後に海の一族に受け入れられることになるのだが、そこで描かれる子どもたちの適応能力の高さは特筆されていいだろう。森の一族だった彼らが、海の生活に適応するのは、大人のナヴィには難しいことだが、二つの異なる部族の子どもたちは互いに遊びながら、難なく新しい環境に溶け込んでいく。ここをたっぷりの尺を使って生き生きと描いてくれたのはとてもよかった。新しい世は子どもたちが創るという当たり前のことを、こんなに陽気に楽天的に描いてくれて、見ている方も微笑ましい気持ちになれる。そこで培った子どもたちと生き物たちの繋がりが、クライマックスの死闘の末に進退窮まった大人達を救うことになるとは、なんという古典的で感動的な終わり方だろう。
 
大人たちの現実世界で繰り広げられている争いにも、作り手はさりげなく思う所を述べている。本作には鯨に似た雄大な生き物が登場するのだが、知性ある彼らも以前は互いに争い傷つけあっていたところ、その愚かさに気づき、争うことを禁じて今に至るということを、海の一族の族長の口を借りて言わせている。理想主義とかご都合主義と片づけられがちだが、これも普遍的な真実であるのは間違いない。二度の大戦で深く傷ついた欧州の国家群の今を見れば、その真実味を想わざるを得ないだろう。
 
家族と言う小さな単位から、種族のような大きな単位まで網をかけて、美しく時には迫真の映像でまとめ上げた、超一級の大作でした。

 

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2022.12.26

「ウィッチャー 血の起源」

https://www.netflix.com/title/81279312
 
NETFLIX 全4話
 
ウィッチャーの魅力はいろいろあるけれど、頭の中にあるファンタジーの定番を結構崩してくれる設定もそのひとつだろう。
 
本作は、そもそも人類がまだ居ない世界・時代のお話で、定型崩しの最北とも言えるかもしれない。エルフ族によって作られた怪物ウィッチャーの起源を巡る活劇が一応の筋だが、驚くことに、この話~エルフ族内部の階級闘争~が、複数世界(今で言うなら異なるユニバース)の混淆を生み出し、その結果、人間族というよそ者が、別世界からの漂着者としてこの世界に現れた、というあたり、大いに刺激を受ける。
 
主人公たちのアクション部分はもちろん楽しめるし、怪物の造形も独特で申し分ないのだが、それ以上に、お話の壮大な背景設定の方が大いに興味を掻き立てられる。
 
来年3月から配信予定のシーズン3「ワイルド・ハント」では、いよいよ異世界との関わりが物語の主軸になってきそうで、大いに盛り上がりそう。期待したいです。

 

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2022.12.19

「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」

https://www.pinocchio-jp.com/
 
NETFLIXで。
 
原作は実は1881年にイタリアのこども新聞に連載されたものらしい。ディズニーアニメはそこから残酷な描写を省くなどして出来上がったものだそう。
 
本作はというと、原作から様々な着想を得て作られているように見える。そして、本作独自のアレンジは、ゼペット爺さんに人間の子供がいて、悲劇的な亡くなりかたをした後にピノッキオがつくられた、というところ。ピノッキオがなろうとするよい子のイメージは、最初はこの亡くなった子供に重ねられている。
 
それが、お話が進むにつれて、よい子であることよりも、ピノッキオ自身のアイデンティティが善きものになっていくことに焦点が移っていく。それが最後にゼペット爺さんの感動的なセリフにつながっていく。
このあたり、タイトルにあるとおり「ギレルモ・デル・トロの」作品として終始一貫していて、単なる翻案のレベルを超えて高い完成度になっている。
 
また、遊んで暮らせる国が、第一次大戦時の少年兵の訓練に差し替えられているところも、作り手が本作を「自分の」作品ととらえている意識が感じられる。これが原作やディズニーアニメの焼き直しではなく、それらにインスパイアされながらも、独自の作品として成り立っているのが強く感じられる。
 
ストップモーションアニメであるのをつい忘れるような自然な動きと、登場する生き物たちの味わい深い造形とが相俟って、いつのまにかデル・トロの思い描く物語世界に引き込まれる。
 
よく知られた、記号化されたピノキオの話ではなく、人形が人間に生まれ変わるために何が必要か、それが周囲をどれほど変えていくかを、温もりのあるまなざしで描いた、一級の作品でした。

 

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2022.12.12

「スクール・フォー・グッド・アンド・イービル」

https://www.netflix.com/title/80218885
 
NETFLIX
 
おとぎ話の典型をいちいち組み替えて現代的に再解釈するという感じの学園もの。とりわけ、善とされているものが現代では偽善になりがちということを、善悪双方が「善(悪)を演じている」と自覚している設定が面白い。
 
とはいえ、興味深いけれどそれほど深くもない、NETFLIX映画という新ジャンルに区分けされるライトな作品。
 
よく言われるとおり、聖書の中で悪魔が殺した人間の数に比べて神が殺した人間の数は桁違いに多い話など思い出される。
 
一方で悪の側が実は過去に勝利しており善人に化けているというのもいかにも悪らしくてよろしい。
 
おとぎ話の中の善悪は、まことの善悪に比べると、確かに境目は曖昧なのかもしれない。

 

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