1,042 posts categorized "映画・テレビ"

2018.06.09

「いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち」

たしか、「十二人の怒れる男」という映画があった。ひとつの部屋に十二人の陪審員が集まって、被告が有罪か無罪かを吟味するという映画で、言葉のやり取りの緊張感といい、議論の行方の見通せなさといい、観客を釘付けにする傑作だった。

本作はタイトルはそれを真似ているようだけれど、内容的には及ばない。つまらなくなはいのだけれど、まあ普通の映画。

前半はともかく言葉が過剰。教授たちが専門分野については半日や一日はしゃべり続けられる知識と情熱があることはわかるのだが、見ているほうはオタクに付き合っている感じがあって少し退屈だ。

中盤は、作戦が順調な中で、ところどころ笑える部分を楽しめばいい。

終盤、列車と並走するところは、アクション映画の借り物だが、まあまあよくできている。

結局、彼らがあの後どうなったのか、断片的な映像がスタッフロールの合間に流れるのだが、ちょっとフラストレーション解消には弱い。

といった具合で、見ても見なくてもというくらいでした。

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2018.06.08

「ゲティ家の身代金」

クリストファー・ブラマーさん、なかなかよかった。作り手はよく短期間でリカバーしました。

でもポリコレは置いといて正直なことを言うと、ケビン・スペイシーで見てみたかった。彼はこういう役にうってつけだと思うんだけど・・残念です。

映画の方は、まあ普通ですかね。
この金持ち老人が、孫を連れて古代ローマの遺跡を歩きながら、自分はローマ皇帝の生まれ変わりだ、などと言い出したときは、稀代の吝嗇家のどんな哲学を描き出してくれるのかと、少し期待していたのだけれど、結局、皇帝とは似ても似つかない、ただのけちんぼ、金の亡者だっただけでした。

いや、金の亡者というのは正確ではないか。むしろ、数字を増やすゲームに飲み込まれてしまった人、という印象だった。ポケモンGOでAP増やすのに熱中するワタクシと同じですね(笑)。

それから、イタリアのマフィアって怖いんだな、というのも印象に残りました。
実話にインスパイアされているけど脚色ありますという断り書きからすると、人質の耳を切り落とすとかは脚色かと思ったら、後で調べると実話なのね。

おっかなー。
今でも南の方はそうなんだろうか。

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2018.06.03

「レディ・バード」

ここしばらく私的いち押し女優のシアーシャ・ローナン。健康で芯が強くて素直な感じがとてもよいです。

その彼女が本作ではDQNのJKですよ!
なんですかこの取り合わせは。すんごくよく似合ってます。

まあ、DQNというのは言い過ぎで、いつも居場所を探して活動的な、よくある若者像なんですけどね。見てみるとよいのですよこれが。

有名な若手女優さん主演のこの種の青春映画は、それぞれの個性を引き立たせる物語が用意されていてうれしいです。

本作で、最後に彼女は、自分で考案した「レディ・バード」を名乗るのをやめ、ごく自然に等身大の一人の若者として、親が大切に付けてくれた名前を名乗って一歩を踏み出すのですが、それがとても似合っていてよいです。有名人にありがちな病的なイメージが全くない。

そこがたぶん彼女の最大の長所で、大女優とか言うありきたりな評価を弾き返すような健全さがあります。日本の女優さんでいうと麻生久美子みたいな、親しみやすくて普通に見えるのに、実力は凄いっていう。

彼女の役柄の周囲の人々も普通に陰影があってよいです。
たいへん満足いたしました。


でもアカデミー賞的な作品かといわれると、ちょっと違うかなとも思いますが。

シアーシャ・ローナンに賞を取らせるため、というなら納得でございます。

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2018.06.02

「万引き家族」

毎度ながら、いい映画は感想を書くのが難しい。

本作には、2つの要諦があると思う。ひとつは家族というものは何かという問いかけであり、もうひとつは、開かれているはずの社会の中で、自分たちの小宇宙に閉じて一緒に生きることの是非、といったところか。

同じ監督の「だれも知らない」は子供だけの閉じた世界を描いていた。その小さな世界の幸福感、綻び、破綻を、小さなエピソードを丹念に積み重ねることで見せていた。

本作はそれと地続きのような印象がある。子供だけでなく、今度は大人も交えた閉じた小宇宙。より大きな社会の余剰をもらい受けることで生活を成り立たせて、同じような幸福と綻びの予感と、そして破綻とを。
一貫して描かれているのは、一緒に生きていく者達の繋がりだ。本作では特に、子供だけの世界では描けなかった、より長く生きてきた者達との絆が多く挿入されている。生きるための知識の伝承、社会のルールと対処の仕方、価値観や世界観の伝達。あるいは拒絶。一方的なものではなく相互的な存在価値。

この監督はそういうものを描くのが本当にうまい。
「そして父になる」は残念ながら見逃したが、たぶん同じ文脈にあるのだろう。そういえば「海街diary」も、腹違いの末の妹を包み込んで生きる4姉妹の物語だった。

本作では、破綻の後を、単なる後日譚ではなく、本筋をまとめる締めくくりとしてじっくり描いている。共生する小さな集団が、より大きな社会のルールに包摂される様子があって、共に生きることと家族という言葉の本質と相違が浮き彫りにされる。

社会というものは、家族という概念と形式が共有されやすいためか、すべてをその枠にはめようとする。

破綻の後、施設で暮らすことになった男の子は、年長の男が自分を置いて逃げようとしたのかどうか静かに問う。男は、そうだと答える。家族であるために欠かせないものが欠けていたと、男は悟ったように見える。
男と一蓮托生で生きてきた女は、刑務所の面会室で、私たちではだめなのだ、親の代わりはできないのだ、と吹っ切れたように清々しく言う。

一旦は、家族という形式の前に、この小集団は解体され吸収されたのかと思わせる。

しかしその後、作り手はさらに続ける。
女の子は、生みの親の元へ戻ってどうだったのか。家の中でも化粧という仮面を脱がない女親、新しい服でも買ってやれば子供の歓心など簡単に買えると思っている程度の女を見ていると、生みの親こそ本当の家族という安易な考え、社会の規範に、再び疑問を抱かざるを得ない。

まだ感情をうまく言葉にすることができないほど小さなこの女の子は、それゆえに強い説得力を持って問いかけてくる。

人に欠かすことができない共生というものを体験した女の子は、家族であるはずの生みの親の元で、それを再現することは難しいと感じている。それでは家族というものは一体何だろうか。

作り手は、ものごとの両面を描いていて、それも杓子定規な手法ではなくリアリティをもって描いて、言葉にすることを拒んでいる。丸ごと呑み込んで糧にしろと言っているかのようだ。

こうした作品が、文化の地位が高い国で最高の評価を受けたということに、感慨を覚える。遠い国の人たちも、生活様式の違いを超えて、同じような感性を持っているということに、安堵と感謝を。

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2018.06.01

「デッドプール2」

はちゃめちゃ感は1に比べて少し減った感じ。1は大詰めに近づく従って話が大味になっていくのが難だったけど、本作はちゃんとクライマックスというものを設定していて、その意味では普通の映画。

デップーのシリーズが普通でいいのかとは思うけど。
といっても、関連が薄そうな要素をどうにかまとめ上げて空中分解せずにいるのは、すごい力技。作り手には努力賞をあげたい。

ひとつ大きな不満を言うと、予告編ですごく笑えたあのシーンが、なんだかつまらない編集になっていてがっかりだった。

それから、たくさんちりばめられている映画ネタは、少しあざとい。笑いを取りにいく意図が見え見え。

そんなとこですかねー。
次があっても見るかどうかは微妙かな。。競合も多いし。

あーでもドミノっていうキャラクタは面白いんだなこれが。デップーの軽いノリに合ってる。「ユアデスティニイィィィ」とかいう感じの根暗な作品群を今後も虚仮にし続けてほしいですはい。

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2018.05.26

「犬ヶ島」

形式美が特徴のウエス・アンダーソン監督。
形式の中にすべてを表現する日本の美。
二つが出会って、こういう形に。

黒澤映画の音楽とか。
XJ750ってYAMAHAかなとか。
AIBOみたいなのもいる。

それから、和太鼓の音ってとてもいい。ということが意識にのぼりました。

とても一回では見切れないディテールがあって、かなりの早回しで端折る部分もあるけれど、目が慣れてくるとあーら不思議、ちょうどいいです。

お話は他愛もないし、悪役もつまらないけど、それを補って余りある美があります。

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2018.05.20

「モリのいる場所」

庭はひとつの小宇宙なんだなあ。
というと陳腐な感想だけど。

英国人なんかもリタイア後は小さな庭の手入れに心血注ぐという話は聞いたことがある。小さな世界もよく見れば無限の広さを持っているのだろう。蟻をただ眺めているだけではないのがわかるエピソードは、そういうことを端的に示している。

上映時間は2時間かそこらだけれど、後から気付いて驚くのは、この時間を使って、たった1日を丹念に描いていることだ。

小宇宙はそれくらいに広い。

その小宇宙を、では主人公の画家本人が排他的に維持しようとしているかというと、そうでもないところが融通無碍な感じがあってよい。
隣地のマンション建設に対する姿勢などがその表れだ。折り合いながら生きていくことを識っている。仙人などと呼ばれるのは確かに心外だろう。


ゆったりと浸れる時間を持たせてくれる作品。
山崎勉と樹木希林のやりとりも楽しい。


あ。この画家さんは実在の人なのね。
美術館まであるじゃないですか。
http://kumagai-morikazu.jp/

来週あたり行ってみようかな。

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2018.05.18

「GODZILLA 決戦機動増殖都市」

いやいやいやいや
ゴジラってこんな面白い映画だったっけ?

と思ったら
最後の一言で椅子からずっこけましたよ。
これは次も絶対見ねば。


とまあ、煽りはそれくらいにして。

これまでのゴジラ映画というのは、ストーリーはあんまりなかった。ゴジラの巨大さや圧倒的なエネルギーや禍々しさが主であって、ストーリーはとってつけた感があった。

しかしこのアニメ版では、ストーリーがそれなりに練られている印象がある。

もちろん、3部作のうち2部を見終わってもまだ、いったい話がどうころぶのか、これだけいろいろ投入された材料をどう回収していくのか、見えない部分は多い。

けれども、見えないからこそ、期待が膨らむ。ああでもないこうでもないと想像を巡らすだけで楽しい。

あの双子の少女と鱗粉に守られた種族の神は登場するのか。
今回メカゴジラを構成する素材は登場したが、それは一体この後どう形を成すのか。まさかこれで終わりじゃないだろうな!
そしてそしてこの第2部最後に出てきたキーワード、宇宙の破壊の象徴たる〇〇〇は!


「怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ。(フリードリヒ・ニーチェ)」


さあ、第3部も見逃せなくなってまいりました。

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2018.05.17

「タクシー運転手 約束は海を越えて」

光州事件というのは確か日本でも随分報道されていたと思う。私はまだ未成年だったし、あまり記憶はないけれど、軍隊が民間人を銃撃したり暴行している映像は見たような気もする。

このお話は、その事件のさなかに、取材活動で現地の様子を伝えたドイツ人記者を手掛かりにして、普通の人たちがどう事件に関わったかを描いている。

韓国は民主主義を自分たちの手で掴んだと言われるのが伊達ではないことがわかる。とはいえ、光州事件とそれに連なる暴動は全羅南道一帯の話で、韓国の北半分はどう関わったのか、ここでは触れられていない。実際、これを契機に国内の南北対立は深まったとも言われているようだ。

いずれにせよ、こういう事件を克服して、韓国という国の今があるのだということを知ることができる作品。

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2018.05.13

「地獄の黙示録」

デジタルリマスター版で、後代に追加したものを削って最初のオリジナル版に戻したものとのこと。

これまで部分的な映像を観たり批評を聞いたことはあっても、実際に通しでちゃんと見たのは初めて。まあ、古典なんでしょうか。

これが制作された当時のことだから、きっと衝撃は大きかったのだろうとは思う。けれども、今の時代に見れば、戦争映画とファンタジーを足して2で割ったような感じ。

ベトナムでの敗戦後、米国は傷も癒えて世界に覇を唱えているし、懲りずにまた中東などで戦争もやらかしている。まったく懲りない人たち。。

作品は、正直なところ少し演出過剰な感じはする。当時はこれがウケたのだろうけれど、私はこの種のものはやや見飽きている。

戦争の悲惨についても、これ以降、もっと過激に冷徹にリアルに描いている作品もある。

カーツの寝返りにしても、米国にとってはショッキングな物語かもしれないが、歴史上のひとこまとして見るならいくらでもありそうな話。日本だと・・・足利尊氏とかそうかな。

まあ、基礎的な教養として見ておけてよかったです。

そうそう、ただ1点だけ、恐るべき点があった。この作品は途中経過はともかく、カーツの元に辿り着いて彼の述懐を聞くシーンに価値があると思うけれど、その述懐の中で、米軍がワクチンを打ってやった南ベトナムの子供たちが、その後どういう目にあったかを語るくだりがある。
ここだけは、今の映画にも滅多にないすごい内容だった。アメリカ人はその文化の違いに戦慄しただろう。

異文化に対して、迂闊に余計な働きかけをしてはいけないのだ。

その教訓は、時代を超えて価値がある。

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