カテゴリー「映画・テレビ」の1000件の記事

2020.11.23

「クイーンズ・ギャンビット」

NETFLIX配信。全7話。

これだよこれ。アニャ・テイラー=ジョイの役は。

というくらい、彼女の魅力を遺憾なく引き出す設定とストーリーで、言うことありません。満足しました。少しづつ見る予定が、気が付くともう止まらず一気見です。

このくらいの長さのドラマなら、途中弛緩せずに流れを作ることができるという見本でもあります。ちょうどいいタイミングで次のトピックが起きてお話が盛り上がります。

少女の不幸な過去にはあまり大きな尺は割かずに、むしろ、この稀代のチェスプレイヤーが破竹の勢いで勝ち上がっていく様をドラマチックに描いているのがよいです。かといって、能天気なお話でもなく、母が残した負の遺産に人知れず苦しむところもきちんと描かれて、かつ、怒涛の進撃や挫折と有機的に表裏を成しているのが、よい味わいです。

一時は破滅さえ予感させる流れもあってはらはらさせるのもニクいし、それを乗り越えて、ソビエトのチャンピオンチームとの対局の中で、温かい賞賛を送られるクライマックスも泣けるし、全てが終わって緊張がほぐれた帰国の途で、共産圏の街の人々と、一局対戦する終わり方など、心底チェスが好きなんだなあこの人たちはということがよく伝わってきて、頬が緩みます。

チェスでは人間はAIに勝てなくなりましたが、人と人との飾らない、嘘のない、気持ちの良い真剣勝負を介した交流には、相変わらずこうしたものが必要なのかもしれないという余韻を残してくれました。良作。

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2020.11.22

「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY」

あまりにばかばかしそうだったので映画館では見なかった。それがNETFLIXに来てたので、暇にあかせて一応見た。
やっぱりあまりにばかばかしかった。これは女性向けなのか。それとも女性の味方を任じる男性向けなのか。さっぱりわからない。

とはいえ、人に頼らず自分でなんとか生きていきましょうねというお話のようだということはわかった。
何か始めるとしても先立つものは金だということも。
それと、子供を甘く見ると死にますということも。
勉強になりますな。

そんなところで。

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2020.11.15

「日本沈没2020」

NETFLIXの方では、比較的初めの方で父親が爆死するところで、これはちょっと見ちゃおれんと挫折したのだったけれど、気になってはいたので、映画で見てみました。

どうしても細切れにストーリーをなぞるようになってしまうのは仕方がないですが、それなりに筋を追えて感動を盛り込んでいるのは剛腕だなと思います。

我々日本人のアイデンティティというのは、割と重要なテーマではあるのでしょう。原作がこれをどう扱っていたかもう忘れましたが、本作でその意図が露わになるのは、物語も終盤の灯台のある孤島でのラップのシーンでしょうか。ここまで主人公達は散々な目にあってきて、登場人物達も残念な死に方で死にまくってきていて、付き合わされてきたこちらもげんなりしているわけで、いわば飽和攻撃を受けて脳が麻痺している状態なわけですが、その頃合いを狙ってこのシーンを叩きつけてきた感じです。そりゃまあ沁みますね。そこは素直にやられたなと思います。

ただまあ、エピローグのあまりに楽観的なお話は、一般向けの映画作品として締めるにはこれくらいしかないのでしょうけれど、どうだかなあと思います。

ユーゴスラビア人を名乗る陽気なお兄さんを入れているのはアイデアとしてはいいのですが、ユダヤ人の方がより辛辣になったかもしれません。他人の善意を信じてあてにするか、それともあくまで同部族の自力救済でがちんこで生き抜くかといった違いでしょうか。

昭和に生まれ育った私には、子供が変に英語かぶれなのが少し嫌でした。あんな子供は少なくとも自分の周りにはいないなという違和感です。いまどきはどうなのでしょう。世田谷の話のようなので、ただいま目黒在住の私にはわかりません。

父親が退場したあと、ほどなくして現れ行動を共にするYouTuberは便利な都合のいい存在。普通の人間では生き延びられないような状況をぎりぎりクリアするための、状況の外にいる超越者です。これを状況の中に置いてしまっているので、見ている方は少し鼻白みます。そんなうまい話しがあるかいなと。最後の気球はその言い訳でしょうか。

ということで、最初の辺りの凄まじさを後半ではかなり緩和して、ショックを和らげている印象の作品でした。

 

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「ラ・レボリューション シーズン1」

伝奇ものですかね。有名なフランス革命を題材に、不死者の国づくりを目論む国王の企みを打ち砕くお話・・だと想像できます。想像できますというのは、まだ先行きがよくわからないからで、まず第1シーズン8話を一気見したところでの予想です。

このシーズンでは、まず地方豪族の伯爵家に起きた悲劇と、貧窮にあえぐ民衆の苦難を描いています。というとなんだか格調高そうですが、そこはテレビドラマですから、少し間延びしがちな演出とやや安っぽいかというくらいの筋書きで、謎はふんだんにちりばめながら進みます。ブードゥーのおっさんとか今後どういう役回りなんでしょね。

ヴァンパイアものの亜種なわけですが、その中心にいるのがフランス国王で、というのが、なんだか織田信長は冥界の魔王、みたいな設定で、これから面白くなるんでしょうか。国王は第8話の最後に足だけ見せる思わせぶりで次シーズンも必ず見ろと迫ってきます。

力の対決だけでなく、医者をお話の中心に据えて、感染症の免疫療法という線も濃厚です。きっと首を切り落とすのと注射して直すのとが平行して進むのでしょうね。楽しみです。といってもなにせ一気見すると長いので、次も見るかどうかはわかりません。

まあ、悪くないんじゃないでしょうか。

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2020.11.09

「ウルフウォーカー」

絵本的な絵柄で魅せる、力強く躍動する美しいアニメーション映画。
まずもって目が癒されます。

自然崇拝が色濃く残る社会に隣り合うように生きる狼たちとその護り手が、文明の浸食に晒されて新天地に逃れるために闘うお話。

人間の少女とWolfWalkerの少女の交流から入って、母親への想い、権力と束縛からの自由などの心情を重ね合わせていく。まるで、なぜあなたはその社会に留まって束縛され続けることを望むのか? と問いかけてくるかのよう。

普通の物語があくまでも人間視点で語られることが多いのに対して、この作品は、人間の少女がWolfWalkerになっていくことで、狼の視点、逆側からの視点に重心が移っていく。その点がユニーク。
そういえば、大ヒット作「アバター」もそうでした。

人間中心主義の立場からは評価されないかもしれないけれど、私にとっては心に残る良い作品でした。

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2020.11.01

「異端の鳥」

生の重み、実感を伴った動物的な人の生き方を、美しいモノクロ映像で言葉少なに綴る東欧映画。

公式サイトで受賞歴を見ると、最初が2012年で、それから間を置いて2019,2020年にも受賞している。息が長いというのか、それとも息を潜めていたとでも言うべきなのか。

原題の"THE PAINTED BIRD"が示す通り、人が集団を維持しようとするとき、余所者とマーキングされた者に対して、どれほど残忍になれるかを見ることになる。

旅を続ける少年の前に現れる、一見善人かと思えた人物が、大小の悪を発露していくのを、少年と共に見ることで、観客は自身の中の獣性に気づかされる。

被害者、当事者として翻弄されながらそれを見つめる少年の瞳は、物静かに、悪魔的な光を湛えて、時には報復を伴いながら逃避行を続けていく。

苦難の道のりの発端となった、少年の家族との別離は、最終のエピソードで贖われるのだが、自分を置き去りにした父を許すことができない少年の心情に我々は共感する。

そして、最後のシーン。父の腕に刻まれた番号を見て、少年は知るのだ。父も自分と同じ、疎外された者だったということを。

たったこの一瞥、一瞬で、少年は赦しを悟る。見事な締め方でした。

こういう本当に映画らしい素晴らしい作品を久しぶりに見られて嬉しいです。

 

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「ザ・ハント」

お気楽なコロシアイでも見て気持ちを安らかに保とうと思って見に行ったら、これがもう皮肉の効いた爆笑問題作。コロシアイはまあお話の装飾的な付け足しで、むしろ嘘と断絶にまみれた米国の今を自嘲気味に誇張して拳で語るようなとんでもない作品。

明後日に迫った海の彼方の大統領選とかをプロレスを見るかのように楽しんでいるなら、この映画必見です。

でもねー。これが果たして自分たちに無関係かというと、全くそんなことはないなと思えてきて、だんだん笑えなくなるですよ。

もうね。どうにかならないんですかねこの行き詰まりは。生き残ったのが一応レッドネック側の彼女の方でまあよかったと言うべきなんでしょうかねえ。そういう風にこの作品は作られてはいますが・・。

それにしてもアメリカ人は銃と戦争が好きでしょうがないのね。と言ったら真面目に日々の生活に追われているアメリカ人は怒るだろうなあ。


映画としてはとてもよく作れていて、まあこれが公開まで漕ぎつける米国映画の水準なんだなと改めて感心しました。

 

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2020.10.25

「スパイの妻<劇場版>」

もとはNHKのドラマだったそうで。ちょっと時代掛かり過ぎのきらいはあるものの、ポイントはまあまあ押さえている。コスモポリタンという言葉は久しぶりに聞いた気もするけど、ちょっと浮いている感じだろうか。

お話は、社会が一方向に向かって暴走した戦前の空気の中で、理想と主張を貫こうとする貿易商の主とその妻の、信頼と絆、それさえも手段として使った主の鋼の決意、残された妻の達観を浮き立たせている。

自社の社員を贄として差し出すことで、夫の理想に追いつき並ぼうとした妻が、自分もまた贄にされたとわかったときの、「お見事でございます!」の叫びが、ひとつの山。浅知恵と言うのは簡単だが、そこに、保護され続けることを否定して自立を望んだが、経験不足は隠しようもなく挫折した女性の、悲痛な響きが聞こえる気もする。

そして、後日談の中で、彼女が旧知のエスタブリッシュメントに語った言葉が、この作品の白眉だろう。もちろん全ては、これを言わせるための筋書きであったわけだ。

戦前との類似が囁かれる今の世情に、この話は刺さるものがありました。


ロケがなかなかいいところを使っている。神戸の建築も文化財級のところを使っているらしいけれど、関東の人間としては積善館とか出てきて懐かしかった。主人公夫婦の家の玄関もどこかで見たことがある気がするのだが思い出せない・・

蒼井優。なぜあなたはいつまでたってもそれほど演技が下手で発声がだめなのか。「お見事でございます!」のシーンは、この映画最大の見せ場にして裏切られた妻の悲哀と男への畏敬とがないまぜになった味わい深い想いを観客に焼き付け粛然と涙を誘うべき場面なのに、あなたが昏倒したときのこのおれたちひょうきんぞくのオチみたいな喜劇感はなんですか。まわりの俳優たちが全員笑いを必死にこらえている気さえしましたよ。全部あなたのせいですよ(笑)。

まあすごく笑えたから許しますけど。

 

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2020.10.18

「劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編」

策略渦巻く前半は伊之助が突破力で大活躍。後半は手に汗握るけど単調な力比べで煉獄が・・・というよく練れた構成。
作品世界をあらかじめ知っていることが前提の筋書きですが、NETFLIXのアニメで予習しておいたのが生きました。

子供の情操教育にはなかなかよいエピソードだったのではないでしょうか。といっても映像的には手首が切れ飛んだり首を切ったりもありますが、台所で魚を捌いたりする日常とさして変わりはないからいいのでしょう。

それにしても、なんだか昭和が戻ってきたみたいな感じがちょっとしました。まあ大正ロマンの時代の話だから、そういう感じになるのかもしれないけど。

漫画の方は2013年からの連載だけれど、完結したいま、映画化されたのはちょうど良いタイミングで、平成の沈滞した手詰まり感を吹き飛ばしてくれるとよいなと思います。コロナの停滞も一緒にね。

 

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2020.10.04

「エマ、愛の罠」

愛の罠とか極めて不道徳とか煽り文句が流れているけど、まあその点はそれなり。ダンサー達のストリートでのパフォーマンスや、火炎放射器を使ったストレス解消や、お約束の乱交パーティなど、かなりアナーキーな感じが漂ってくるけれど、その隠された目的が、子供と家族に対する真摯な希求である点が、単なる不良映画とは違うところ。

作り手が意図しているかどうかわからないが、この作品は、行くところまで行った核家族化の崩壊と、それに代わる新たな家族像を示していると言えなくもない。子供を安心して育てるには、ふた親だけでは十分ではなく、多くの大人に囲まれて、一緒に育つ子供たちが必要だということを見せている。そして、血のつながりは必ずしも重要ではない。

映画、特にハリウッド映画ではよく、仲間たちのことを「ファミリー」と言うことがあって、その割に家族としての日常が描けていない口先だけのものが多い。けれどもこの映画の女ダンサー達の絆は、じっくりたっぷり描かれていて、本物を感じさせる。彼女たちなら、確かに、子供を立派に育てられそう。

そのあたりを描けているところに、本作の値打ちがあると思います。

それにしても、この主演女優さんの不貞不遜な眼力は何でしょうね。それだけでもぐいぐい引っ張られます。

堅苦しい規則の中で毎日を生きて、何かが死にかけているなら、ちょっと見て勇気をもらえかもしれない、そういう感じの一本でした。

 

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