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2025.11.09

「爆弾」

https://wwws.warnerbros.co.jp/bakudan-movie/

この映画のど真ん中で最初から最後まで他を圧する存在感を放っている佐藤二朗がどうして主役としてクレジットのトップを飾らないのか憤りすら覚える^^;

というくらいに、佐藤二朗の怪演に圧倒されます。間違いなく彼が主役ですね。

内容はたいへん濃ゆいです。容疑者のホームレス男が取調室の椅子で、あるときは刑事をおちょくり、あるときは熱弁を振るいながら、我々の社会の現在地をこれでもかというくらいに多面的に皮肉って、人々の虚栄を抉ってきます。

いやー面白かった。主人公が、ホームレスにも関わらず異様に弁が立つのは少し違和感がありますが、まあそれはお話を成立させるのに必要な虚構ということで。

刑事の三者三様の取り組みと勝敗をざっと見てみましょう。
まずベテラン刑事は、現状の秩序を体現する役です。経験の力で善戦はするものの、容疑者のカオスに最後は呑まれて敗北します。
次の切れ者刑事は、容疑者と同じく社会への不満を抱えており、いい勝負を展開しますが、受け身の防御しかできない圧倒的に不利な立場を覆すことはできませんでした。それでも容疑者の去り際に引き分けと言わせる力闘を展開します。
そして最後、取り調べの現場からは離れていた、最初に接触した刑事は、容疑者の答えのない罠に対して一言だけ、「それでも不幸せじゃないんだ」と評価軸をずらした答えを返します。

彼は、被疑者が終始訴えている社会の差別、理不尽、不正義等々について、関係ないと突っぱねているように見えます。もちろん彼は、尊敬する年配の同僚が不祥事から自死を選び、それがこの大事件の原因になったことを知ったうえで、そう言っています。

ここはどう受け止めるか難しいところです。平穏な日常を生きている大多数の我々は、この刑事と同じ立場です。身近に理不尽に晒されている人がいたとしても、それは自分事ではないという一定の無関心があります。誰だって他人よりは自分の生活と家族が大切なのは、誰も否定できません。

容疑者はその点を突いてくるわけですが、観念的に対処しようとしても、最初のベテラン刑事のように敗北するのは目に見えています。もっと根深いところで、我々人間は誰しもそうした矛盾や痛みを抱えながら生きているということを深く理解して飲み込む(あるいは開き直る)度量が求められる、としておきましょうか。

当然ですが、それで課題が解決するわけではありません。本作の最後の爆弾はまだ見つかっていない、というオチは、そのことを暗示しているようです。なかなかニクい締めくくりです。

本作は、本年のトップ5くらいには入ると思います。
原作小説の力なのだろうとは思いますが、こういう作品がときどき出てくるのは嬉しい限りです。

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