「果てしなきスカーレット」
https://scarlet-movie.jp/
見るかどうか迷ったが見てよかった。
映画ではなく寓話として見れば、これは間違いなく名作と言っていい。
私は映画的な教養がない分、映画鑑賞の定型的な枠組みに囚われることがない。むしろ作品のリズムや奥行きを大切にする。
その点で本作は一級品だ。この監督がときどきやってしまう後半のダレが今回はなかった。そして主人公がなんとも魅力的だ。これは絵と声と動きの力だろう。アニメーションの利点を存分に活かしている。実写の俳優では到達できない地平だ。
主人公だけでなく、背景となる煉獄のような世界とその審判者を務める龍のような存在の描写もすごい。仄暗く荒涼とした背景の描写はこの話の寓話性を際立たせているし、龍の超越的な力は、主人公を簡単には死なせずに、本作のテーマが包含する重荷を背負わせる軛を思わせる。
そしてテーマ。
復讐と赦し。それは同族殺しを繰り返してきた人間の永遠の課題だろう。キリスト教的な考えに立てば、赦しとはまず第一に神が無条件に人に与える恩寵であり、そこから、人が他者に与える赦しが生まれる。復讐する権利を手放し、相手の幸福を願うことを「意志」として選択することが、キリスト教的な他者への赦しだ。(by Gemini)
作り手はここにもうひとつ、新たな「赦し」を付け加えている。それは最後まで見てのお楽しみだが、それを導入するために、復讐の炎に焼かれる主人公とはまるで別の、もう一人のスカーレットを描いている。
おそらく、本作にダメ出しをする向きは、特にここの場面が受け入れ難いのだろう。しかし、煉獄とはおよそ場違いな渋谷の街角で楽しげに踊る主人公を描いてこそ、時代を超えた普遍性を持ち得る3つ目の赦しの意味が深く染み入ってくる。眉間に皺を寄せて仄暗い荒野を彷徨う主人公が赦しを得るためには何が必要不可欠か、それこそがこのシーンで作り手が伝えようとしていることなのだ。
本作は名作だと敢えて言う理由は、ここにある。
まあ確かにどぎまぎしますけどね^^;
小理屈は置いておいて、芦田愛菜の歌声に乗って伸びやかに踊るスカーレットを、素直に楽しみましょう。それこそが、本作の正しい鑑賞態度というものです。わかってもわからなくてもね。
こんな具合に従来のいろいろな枠組みを逸脱しているので、本作は寓話として楽しむのがよいわけです。絵も、脚本も、そういう風に作られているのですから。
私の目には、本作はたいへん意義のある良い作品に見えました。
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