「チェンソーマン レゼ篇」
https://chainsawman.dog/movie_reze/
「ルックバック」と同レベルの何かを期待して見に行ってみたのだが・・
まあブロックバスター映画でそういうことをするのは却ってよろしくないのだろう。
報われぬ恋のひと時の幸福感や、それが叶わなかった切なさ、ただ主人公ひとりがその理由を知らない悲哀、そういったものを描く要素は十分にあったし適切に配置されていたと思う。それなのにこの感動の薄さは何だろう。
ひとつには、アクション部分の激烈さが、微妙な感情を吹き飛ばしてしまったのかもしれない。あるいは、話の持っていき方が、主人公に惚れた女が組織を裏切って命を落とすのと似すぎていてマンネリ感があったのかもしれない。
だがそれ以上に、切なさのような微妙な感情は、取り扱いに細心の注意が必要なのではないかと思った。どのジャンルについても、必要な要素は揃っているのに心が動かないということはある。人の情動は微妙なものだ。
その点では、「遠い山なみの光」を見たすぐ後だったことで、本作は多少割を食ったかもしれない。あんな繊細さをデンジに期待するのがそもそも間違いなのだろう。
面白いことに、作中でデンジとマキマが一緒に映画を見に行くシーンがある。一日かけてたくさんの映画を見てさして感動もしなかったのに、最後に見た映画の何の変哲もないラストシーンで、二人とも涙を流す。それについてマキマが、人を感動させるのは作為的な技法ではなく真実に触れることだ的なことを言うくだりがあった。(正確な台詞は忘れた)
作者は、人の感動を呼ぶには何が最も大切かを十分に弁えていることが、ここからわかる。そのうえで、本作はこういう風に作っている。この商業映画の立ち位置を、誰よりも作り手自身が理解しているということなのだろう。マキマの台詞は観客への弁明と言ったらうがち過ぎか。
まあ、いろいろ酷いことを書いたけれど、青春の甘酸っぱさやはちゃめちゃさは目一杯あって、レゼは究極にエロつよこわかわいくて 、少年漫画原作の面目躍如ではありました。
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