「海辺へ行く道」
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最初ちょっとダルい感じの始まりで、これは失敗かと思ったところが、だんだん面白くなってきて、後半はたいへん良かったです。初めの方は、まず物語の背景を紹介してたのですね。騙されやすい、擦れていない町の人々や、ひょっとすると人間ではない、夏だけ堤防にやってくる海の生き物の化身とかを絡ませて、アーティスト移住支援を謳うちょっと変わった町の雰囲気を構築しています。
そんな環境の中で、のびのびと作品づくりを楽しむ美術部の子ども達。彼らに日々舞い込む依頼や自分たちで見つけたネタに軽やかに取り組む様子がお話の幹です。
世の中の普通の価値観と時には衝突したり、大人の無理解や身勝手に直面したりしながらも、自然体でアートの精神を様々な形にしていきます。普通の子ども達に見えるけれど本物のアーティスト。見ていると気持ちがほぐれていきます。
もちろん、町のアーティストの中にはニセモノもいます。また、贋作を手掛ける怪しい人もいたりします。でもそういう人でさえ、アートを理解して非アートな世の中との橋渡しをしているように描かれています。そういう緩さが本作の味わいでもあり、アートというものの懐の広さが伝わってくる由縁でもあるのでしょう。
終盤になって、アートという価値観の対極にあるような貸金屋の女がクローズアップされてきます。なにかというとすぐお札を切りたがるこの女が、実はアートな日々を過ごしている子ども達の親戚だというのがよくできています。断絶しておらず、どこかでつながっている。子どもたちもお金に対する拒否反応などはなく、あればあったで嬉しいと素直な反応を見せています。本当に屈託がない。
金ぴかの東京からやってきた彼女が、帰り際にカナリアの笛を吹くところでは、ちょっとウルっと来ました。美術部が自発的に作成したオブジェが、町に現れた不気味な怪物を打ち払ったのとイメージが重なって、彼女の悪い憑き物も落ちたようで、心からよかったねという気持ちになれます。
そんな町の様々な風景を見ていて、ちょっと瀬戸内芸術祭を思い出しました。もう行く機会もないかもしれないけれど、いつまでも懐かしく思い出す景色や作品たち。エンディングの一枚の絵は、絵そのものよりも、背景に映っている海の青さがえもいわれぬ色合いで引き込まれます。
アートの息吹を生き生きと思い出させてくれる、良い映画でした。
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