「国宝」
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芸道ものの本道をいく大作。しかも伝統芸能という因習の世界での話で、芸術家の葛藤とはまた違う、社会との軋轢も加わって見ごたえ十分。人間国宝を演じる二人の俳優、吉沢亮と田中泯の鬼気迫る存在感に圧倒されます。映画というフレームワークでは、表情のアップなども効果的に使われるので、その迫力はいやがおうにも高まります。こんなやつが隣にいたら落ち着かないけど(笑)
吉沢亮と対を成す役回りの横浜流星の方には、それとは別の軸で魅了されます。人間離れした二人の人間国宝と違って、彼の役は、とびぬけた才に恵まれたわけではないのに、家柄という立場上、主役を演じることを宿命づけられている人間の苦悩と足掻きを表すこと。それをきっちり演じ切っていました。病を押しての最後の舞台は泣かせます。
作中で、先代の国宝が死の床で話す言葉がとりわけ印象に残ります。彼ほどの境地に達した人間が、その目指したものと引き換えに何を差し出してきたかが、よく表れていました。
そして、彼らが引き換えに得たものの言いようのない美しさを、吉沢演じる次の国宝が示してくれます。
芸を極めようとする者の突き抜けた姿と、それに関わった人々の愛憎半ばする心情に揺さぶられっぱなしの3時間。邦画もやればできるじゃないかと思わせてくれる作品でした。
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