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May 2025

2025.05.22

「ラブ、デス&ロボット」

https://www.netflix.com/title/80174608

シリーズの4ともなると、さすがにこちらも慣れてきたせいか、特に強い印象に残るというほどでもなくなってくる。これまでのシリーズでは、飛びぬけて印象に残る作品が1つ2つあったけれど、今回はむしろ粒選りという感じ。どの作品もとてもよいお味です。


▼「ミニとの遭遇」
些細な発端からどんどんエスカレートしていくスピード感と、結末のとんでもなさ・あほらしさが面白い。尊大、傲慢、視野狭窄、無知といったような愚かさの詰め合わせをブラックに笑い飛ばすような作品。

▼「スパイダー・ローズ」
一見、仇討の話のように見せていて、実際、尺のほとんどはそれに費やされているのに、実は、印象に残るのはメインストーリーとは全く別の存在。「かわいい」のグロテスクな繁殖力、現実変成力だけが記憶に残る。

▼「もうひとつの大きなもの」
飼い猫と家事ロボットが自分たちを虐待する愚劣な人間どもに対して同盟を結び反乱を起こすというユーモラスな作品。ばかばかしくて笑えて、そしてちょっぴり怖いお話。

ところで、この猫が最後に名乗る「ティングルベリー・ジョーンズ」という名前は何かのパロディなのかと思って、さっそくchatGPTに聞いてみると、パロディの元ネタは見つからなかったが、同じ「Love, Death & Robots」の「Three Robots」(シーズン1 第2話)、「Three Robots: Exit Strategies」(シーズン3 第1話)との関連の指摘があって驚いた。すっかり忘れていたものも、ちょっと聞くだけで掘り出してくるAI・・・こいつらが反乱起こしたら洒落にならない(笑

ちなみに、この猫の名前は英語圏の人から見ると滑稽な響きがあるそうで、そういう線を狙ったものらしい、という推測もAIsが口を揃えて言っていた。

▼ティラノサウルスの叫び
お話の内容はハンガーゲームの焼き直しだが、アクションはなかなかよい。主人公が中国語でナレーションするのは何を暗示しているのだろう。

▼「ジークの宗教」
勃興する工業文明が、中世的な未知のパワーと出会って、不死の者と絶望的な戦いを繰り広げた末に、それまで邪険にしてきた信仰の象徴の力でかろうじて助かるお話。登場する機械文明は手作り感が残っており、悪魔的な存在と均衡がとれている。定番だけど、こういうのは割と好み。

▼「スマート家電と愚かな人間たち」
家の中にひしめくように存在するスマート家電たちを擬人化して、彼らが日頃いかに人間とその飼い猫から酷い目にあっているか、また人間の馬鹿さ加減を見ているかをユーモラスに描いている。特に結末はないけれど、ものをもう少し丁寧に扱おうという気持ちになる。

▼「彼は忍び寄る」
これも好きなタイプの作品。猫はしばしば超越した能力を持つ存在として描かれるけれど、実際、不可能とも思える能力をやつらは時々発揮して見せる。この小品は、詩を愛する人間臭い悪魔が登場するけれど、詩人の飼い猫はそれと堂々と渡り合う。「猫には傲慢の罪がある。私のお気に入りの罪だがね」などと言わしめている。こういうキザな台詞のやりとりにぐっとくる。彼らにとっては人間の詩人などペット同然だが、とはいえ、その詩人が紡ぎ出す詩は彼らが生み出せない種類のものなのだ。

悪魔との闘いで力負けした家猫は野良猫たちに助けを求め、先祖から受け継がれてきた神の戦士としての力を呼び覚まし再戦を挑むのだが、それは陽動に過ぎなかった、闘いの焦点は、悪魔が心から望むものを奪うこと。そしてそれに成功する。知恵の勝利。
逆上した悪魔が負け惜しみに残す捨て台詞が、「お前は文学を傷つけた!永遠にだ!」ですよ。もう笑いをこらえるのが難しいです。背景の格調高いクラシック音楽がまたサイコーに合ってます。

やっぱりこの小品が、今回一番好きかな。

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2025.05.18

「かくかくしかじか」

https://wwws.warnerbros.co.jp/kakushika/

永野芽郁という女優さんが生き生きしていてとってもよかった。不倫とかなんとかはよく知らないし、まあ芸能人の話だしな。
加えて、大泉洋が「描けーっ」としか言わないのもナイス。頑固親父のような役回りだけれど、彼の基本が暖かいのが言われなくても伝わってくるので、たいへんよい味わいになって、感動のラストシーンにつながっていく。

話の展開や心情描写は、クリエイティブな職業を取り上げた映画のよくありそうな定番だけれど、どんな部分に焦点を当てるかで受ける印象は随分違ってくる。「セッション」のような狂気の展開と違って、本作の師弟の関係は基本が暖かい。そして、師弟の対決ではなくすれ違いの機微を取り上げている。その上で、師が望むのとは別の道で大成していく弟子が、師から学んだものは無駄ではなかったことを述懐するラストシーンがとてもよい。

主人公がスランプのとき、付き合っている男から、人間観察をずっとやっているから、きっと漫画家になれると励まされるシーンがある。あの職業には、絵の上手さに加えて話のうまさも必要だということが一言で伝わるシーンだった。

「ちびまる子ちゃん」の緩い毒気が、さくらももこさんの子どものころからの演芸場通いに由来している(たぶん)のと似て、わりと大切なことなんだろう。

途中、怠けたりさぼったりの時期も描かれていて、その等身大な感じに和める作品でした。

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2025.05.12

「新世紀ロマンティクス」

https://www.bitters.co.jp/romantics/

数十年前には、日本にも同じようなカテゴリの映画があったと思う。終戦後しばらくして経済成長が胎動し始める頃から高度成長の終わりまでを駆け抜けた、ひと昔前の世の移り変わりを走馬灯のようなコラージュで映し出す作品だ。本作はそれと同じで、改革開放以降から現在までの中国の移り変わりを映し出している、ように見える。見えるというのは、私は中国の実情を知らないので、これがどの程度実際を反映しているかがわからないからだ。ただ。形式としてはそのタイプなので、おそらく中国もこのとおりの歴史を経てきたのだろう。
そう予想して見に行って、その通りのものを見てきたという感じ。

ただ、それとは別に、本作の時間の流れとともに歩む男と女には少し注目してもいいかもしれない。二人とも様々な職業を経験して、結局、社会的に成功したとはいえないつましい暮らしのまま年老い故郷の大同に帰ってくる。けれども、男がその苦難の人生を顔と体に刻んで老いたのと対照的に、女の方は苦難に耐えながらも覇気と生気を失わず、真っ直ぐ前を見つめている。その違いを際立たせるのも作り手の意図だったろうか。

淡々とした流れの作品でした。

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2025.05.04

「SISU/シス 不死身の男」

https://happinet-phantom.com/sisu/

AmazonPrimeで

もうノリノリですわ。不死身男がやられてもやられても復活して憎々しい敵をぶち倒していくっていう、北斗の拳のフィンランド版というかね。きっとどこの国にもこういうお話はあるんだろうと思います。

この鉄人がまたじじいであるところに本作の価値があるですよ。じじい負けるな!じじい頑張れ!とつい応援したくなります。

悪役がまたキャラが立ってて、狂犬のような奴、冷酷無比なやつ、いい奴、クズな奴、各種揃って各々の持ち味を最高に発揮してくれます。そいつらを血みどろのじじいがぶち倒していく。

すかっとするというのとはちょっと違って、あまりに汚いのでスカッという感じではなくて、留飲が下がるというかそんな感じです。全部おわったらじじいはとにかく風呂に入れ。そういう感じで見終わっておおいに満足しました。

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2025.05.03

「サンダーボルツ」

https://marvel.disney.co.jp/movie/thunderbolts

フローレンス・ピューを見るために行くようなところはあって、実際、彼女の見せ場がたくさんあったのでその点は満足です。

私はシアーシャ・ローナンが好きで、その線で「ストーリー・オブ・マイライフ」を観たのですが、そこでフローレンス・ピューを発見したわけです。他の3人とは段違いに輝いていましたね。役柄のせいもあるかもしれませんが。

さて本作はというと、そのピューが今後のマーベル映画を引っ張っていく顔になるお披露目のようなものなんだろうかと思っていました。が、作品としてはあまり高い評価はできません。何が足りないのかと考えたのですが、むしろ何が過剰かを考えるとわかりやすいです。

お話は、ある一人の超人の暴走を中心に展開するのですが、彼の外向きのパワーは法外で、サンダーボルツの面々では歯が立ちません。そこで彼の内面に侵入して説得工作を行うわけですが、そういう展開は正直言って面白くない。おまけにそれが長い。アクションでこの部分を表現しようとしているのはわかりますが、あまり見ていてワクワクするものではないです。

そういうわけで、MCUの先行きに暗雲が垂れ込めているのを見てきた感じがしました。エンドロールの後のおまけが「4」なので、なおさらです。マルチバースは失敗だという意見もある中で、ほかにいい手も浮かばずにずるずると続いていきそうです。

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