「ラブ、デス&ロボット」
https://www.netflix.com/title/80174608
シリーズの4ともなると、さすがにこちらも慣れてきたせいか、特に強い印象に残るというほどでもなくなってくる。これまでのシリーズでは、飛びぬけて印象に残る作品が1つ2つあったけれど、今回はむしろ粒選りという感じ。どの作品もとてもよいお味です。
▼「ミニとの遭遇」
些細な発端からどんどんエスカレートしていくスピード感と、結末のとんでもなさ・あほらしさが面白い。尊大、傲慢、視野狭窄、無知といったような愚かさの詰め合わせをブラックに笑い飛ばすような作品。
▼「スパイダー・ローズ」
一見、仇討の話のように見せていて、実際、尺のほとんどはそれに費やされているのに、実は、印象に残るのはメインストーリーとは全く別の存在。「かわいい」のグロテスクな繁殖力、現実変成力だけが記憶に残る。
▼「もうひとつの大きなもの」
飼い猫と家事ロボットが自分たちを虐待する愚劣な人間どもに対して同盟を結び反乱を起こすというユーモラスな作品。ばかばかしくて笑えて、そしてちょっぴり怖いお話。
ところで、この猫が最後に名乗る「ティングルベリー・ジョーンズ」という名前は何かのパロディなのかと思って、さっそくchatGPTに聞いてみると、パロディの元ネタは見つからなかったが、同じ「Love, Death & Robots」の「Three Robots」(シーズン1 第2話)、「Three Robots: Exit Strategies」(シーズン3 第1話)との関連の指摘があって驚いた。すっかり忘れていたものも、ちょっと聞くだけで掘り出してくるAI・・・こいつらが反乱起こしたら洒落にならない(笑
ちなみに、この猫の名前は英語圏の人から見ると滑稽な響きがあるそうで、そういう線を狙ったものらしい、という推測もAIsが口を揃えて言っていた。
▼ティラノサウルスの叫び
お話の内容はハンガーゲームの焼き直しだが、アクションはなかなかよい。主人公が中国語でナレーションするのは何を暗示しているのだろう。
▼「ジークの宗教」
勃興する工業文明が、中世的な未知のパワーと出会って、不死の者と絶望的な戦いを繰り広げた末に、それまで邪険にしてきた信仰の象徴の力でかろうじて助かるお話。登場する機械文明は手作り感が残っており、悪魔的な存在と均衡がとれている。定番だけど、こういうのは割と好み。
▼「スマート家電と愚かな人間たち」
家の中にひしめくように存在するスマート家電たちを擬人化して、彼らが日頃いかに人間とその飼い猫から酷い目にあっているか、また人間の馬鹿さ加減を見ているかをユーモラスに描いている。特に結末はないけれど、ものをもう少し丁寧に扱おうという気持ちになる。
▼「彼は忍び寄る」
これも好きなタイプの作品。猫はしばしば超越した能力を持つ存在として描かれるけれど、実際、不可能とも思える能力をやつらは時々発揮して見せる。この小品は、詩を愛する人間臭い悪魔が登場するけれど、詩人の飼い猫はそれと堂々と渡り合う。「猫には傲慢の罪がある。私のお気に入りの罪だがね」などと言わしめている。こういうキザな台詞のやりとりにぐっとくる。彼らにとっては人間の詩人などペット同然だが、とはいえ、その詩人が紡ぎ出す詩は彼らが生み出せない種類のものなのだ。
悪魔との闘いで力負けした家猫は野良猫たちに助けを求め、先祖から受け継がれてきた神の戦士としての力を呼び覚まし再戦を挑むのだが、それは陽動に過ぎなかった、闘いの焦点は、悪魔が心から望むものを奪うこと。そしてそれに成功する。知恵の勝利。
逆上した悪魔が負け惜しみに残す捨て台詞が、「お前は文学を傷つけた!永遠にだ!」ですよ。もう笑いをこらえるのが難しいです。背景の格調高いクラシック音楽がまたサイコーに合ってます。
やっぱりこの小品が、今回一番好きかな。