「教皇選挙」
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この映画がなぜ大勢の人から好意を向けられているか。それは、主人公が常に抑制的で内省的だからだ。軽薄なヒーローものでは描けないものがある。
コンクラーベを取り仕切る首席枢機卿である彼が、選挙の始まりで述べるスピーチがとりわけ印象的だ。はじめは形式的な辞を読み上げようとするのだが、中断して、自らの考えを述べる。確信というものを否定し、いつも懐疑的であれと説く。
作中の多くの場面に彼の息遣いが入っているのは、その姿勢を常に意識させるためだろう。たいへんに効果的だ。
本作には、歴史ある組織の人々が自分たちのリーダーを選ぶということにまつわる諸相が込められている。対立、陰謀、談合、扇動と火消し、蜂の一刺し。それらは映画を構成するためにわかりやすくまとめられ、物語の山と谷をくっきりと作り出して感興を覚えるけれど、それにも増して、主人公の枢機卿が、純粋な想いと醜悪な現実との間で悶々と悩む内省の過程にこそ、この作品の価値がある。
その悩みに一筋の光明が差すような結末と相まって、たいへん味わい深い作品でした。
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