「仕掛人・藤枝梅安」
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0D7CC7G5H/ref=atv_dp_share_cu_r
amazonPrimeで。
原作も名作なら映画も文句なく名作。
昭和生まれのおっさんである私にとっては、こうした娯楽時代劇は子供のころに親しんだ原風景のひとつだ。そこには、近代が押し殺してきた情緒と感性が息づいている。
もちろん、歴史上の江戸時代の実相については正統な学説があるのだろうけれど、私のような無学無教養な一般大衆にとっては、池波正太郎が描いた江戸が真実だ。司馬遼太郎が描いた明治が多くの人々の原風景になっているのと同じように。
長く続いた原作の中で、本作はその最初のエピソードになる。登場人物もまだ多くはなく、その分深く掘り下げられる。2作目以降はどうも少し騒がしい感じもするのだが、最初のこの作品には翳が色濃く、その中で、生き別れた肉親や男同士の相棒や、正道を歩めなかった人々のそれぞれに主人公が下す対処が、言葉少なく静かに語られていく。
心を揺らす最後の仕掛で梅安が口にした言葉が、強く印象に残る。
見終わったあと、長く深いため息をつかせるような、哀切に満ちた作品でした。