「ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪 シーズン2」
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先行して3話のみ公開されていたところ、このほど全8話が出揃いました。前回ではいまひとつよくわからない感じでしたが、全話揃うとさすがに筋が通って存在感がありました。
主な舞台は、よそびととハーフットの放浪、リンドン、エレギオン、カザド・ドゥーム、ヌーメノールの5つ。各地で光と闇のつばぜり合いが繰り広げられます。短い節ごとに小さなクライマックスがあり、そこから他の舞台に切り替わってまた盛り上がり、という形で入れ代わり立ち代わり山場がやってくる。たいへんな満腹感です。
その中で特に興味深かったのはハルブランド(サウロン)とケレブリンボールのやりとりでしょうか。サウロンの様々な立ち姿、俳優がつくる表情とライティングの効果で、あるときは頼りがいのある友人、あるときは闇の化身と様々に様相が変わるのを楽しめます。
その口舌のうまさに、高い知性があるはずのケレブリンボールが次第に篭絡され、周囲の信頼する部下たちから切り離されていくのが圧巻です。もちろんそこには、ここぞという時に幻影を見せるサウロン特有の魔力が働いていることは言うまでもないのですが、それを使わなくても、相手の野心やプライド、高慢につけこみ、身動き取れない状況を徐々に作っていく様は、まるで蛇が獲物に巻きついてゆっくりと締めあげていくのを思わせます。
この時のケレブリンボールを愚かと笑うのは簡単ですが、己の最も執着するものを読み取って目の前に差し出されたら、なかなか抗えるものではないのですから、これもサウロンと対峙してしまった者の運命と言うしかないのでしょう。むしろサウロンの騙しの技とその背後の非人間的な黒い意志とに刮目すべきです。
もう一つ注目したいのがオークを率いる闇のエルフの存在です。アダル(父)と呼ばれるこのオークの長は、過去にサウロンを排除することにいったんは成功したことから、今度も自分が状況を制御できると考えますが、辛酸を舐めたサウロンに最後にはやられてしまいます。それも、彼の子飼いのオークたちの手で。
なぜ前回と違う結果になったかですが、ひとつの台詞にその答えがあるように思いました。アダルの右腕のオークが、アダルの強引な作戦で味方にも損害が出ることを憂いて、「私たちを愛していないのですか」と諫めようとするのですが、アダルは、「愛するお前たちをサウロンの奴隷にしたくないのだ」と言って取り合いません。この右腕は最後にサウロンに操られ、仲間とともにアダルをめった刺しにするのですが、そのすぐ後に、サウロンに進言しようとしてあっさり殺されてしまいます。用済みということなのでしょう。
父なるアダルと彼が愛した子たちの運命もまた涙を誘います。オークにも愛があった。そしてそれを利用してあっさり踏みにじるサウロンの非情さも浮き彫りにもなります。このあたりに、物語としての本シリーズの良さが感じられます。
世界中でヒットした有名な三部作では、サウロンという闇の王がどういう存在なのかはほとんど触れられませんでしたが、このシリーズで嫌でもたっぷり見せてもらえて、おぞましさがいや増しますね。それが本シリーズの価値だと思います。すごいです。
ほかにも、ドゥーリン王子の浪花節的父子愛とか、若きガラドリエルの時折見せるほんのりした色気とか、おまえやっぱりグランデルフだったのかとか、ヌーメノール執政の絵に描いたような王位簒奪ぶりとか、もう各所で見どころ満載。
全5シーズンの予定だそうなので、これからまだまだ楽しめそうです。
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