「モンスターズ/地球外生命体」
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2011年の映画だから、もう十数年前だ。それなのに古い感じはしない。むしろ普遍性が感じられる。
モンスターが住み着いたメキシコから、難を逃れて安全な米国へ戻ろうとする男女二人の旅物語という、少し変わった設定。タイトルから、怪物が派手に暴れるB級ものかと思ったが、実は旅を通じた二人の関係の変化を描いた映画だ。モンスターは要所でお話に緊張をもたらすものの、実際にはほとんど姿を見せない。
本作の良さは、この主人公二人が安易に男女の関係に流れたりしないことだろうか。男の方は初めのうちはその気だったのが、ある失敗から風向きが変わり、真摯な対話の旅に変わっていく。
途中、モンスターの増殖の仕組みが、鮭の母川回帰になぞらえて知らされ、彼らもまた自然の営みの一部であることも描かれる。
旅する二人が背負っているそれぞれの生まれ育ちや境遇が、ある種の不自然なものとして二人を苦しめ素直さを失わせていることと、怪物と思われていたモンスターが自然の営みの中にしっかり根を下ろしていることが、対比的に意識され、それがクライマックスの感動に繋がっていくことになる。
その最後の場面。米国内に無事到着したものの、既にモンスターは壁を通ってこちら側にも襲来していることが判明する。二人が期待した元通りの日常~それが束縛に満ちたものであったとしても~、それはもう取り戻せない。
そんな中で、とうとう全身を現した巨大なモンスター2体の前で恐れおののく二人を尻目に、2体は出会いを寿ぎ歓喜に打ち震える。
ここまで、恐怖の源でしかなかったそれが、いまは幸福の象徴のように見えてくる不思議。それを目の当たりにした主人公二人は過去の束縛からとうとう自由になって、映画は終わる。このあたりの運びが実に上手い。
初めのうちはかなりまだるっこしい感じがあったものの、終盤にかけての緊張感や、米国の外の現実を暗に示す描写などに引っ張られて、感動の最後まで連れていかれます。派手さはないものの良作と言っていいでしょう。