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2024.09.22

「侍タイムスリッパー」

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設定が奇想天外なので、これはおちゃらけコメディにちょっとほっこりを練り込んだ軽い作品だと思い込んでいましたが、とんでもない。観てみたら骨太な一級品でした。導入部こそ設定を生かした笑いの要素が多いけれど、中盤のあっと驚く展開から、武士(もののふ)の心のありようを描き出すシリアス劇に変貌します。時代劇を見て育った身にはこの部分の熱さにぐっときます。

主人公の思いは、お家とか国とかを支える意識が第一にあって、個人の尊厳をなによりも重視する現代社会とは相容れないところはあるのですが、それでも、この熱い思いには胸を打たれます。自分が生きている社会、公(おおやけ)に対する思いと言えばいいのでしょうか。主人公が宿敵との真剣勝負の果てに見せる葛藤、それを克服する彼の恥も外聞もない有様は、我々が久しく見失っているものを思い出させてくれます。すばらしい演技でした。
で、そこをあっさり引き取ってコミカルに引き戻す。上手いですね。

描きたいものがはっきりしているから、随所に光る小技にも奥行きのある感慨が宿ります。ケーキを出されてこんな極上の菓子を誰でも食べられるようになった豊かな日本に涙するところなど、笑いと涙でもうどうしていいかわかりません。このシリアスとコミカルの混ぜ具合がいたるところに見られて絶妙です。笑いの方に振った作りなら安易だろうけれど、主人公の生真面目さを使ってシリアス方向にも同じくらい引っ張っている。この起伏のリズムに悶絶すること請け合いです。

これはもう傑作でいいんじゃないでしょうか。
また本格時代劇を見てみたくなりました。

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