「ヒットマン」
https://hit-man-movie.jp/
グレン・パウエル百面相といった趣の作品だけれど、それに留まらずあっと驚く展開が用意されている。結末は「ザリガニの鳴くところ」を思わせる弱者の生存戦略に行き着くのだが、笑いの中に一抹の苦みを含む、それゆえに真摯な作品。好みです。
本業は大学の哲学教授が、副業で警察の囮捜査の殺し屋役に扮し依頼人をだまし討ち逮捕するという設定。個性あふれる依頼人たちに応じて、相手のイメージどおりの殺し屋像を演じ分ける主人公が笑いを誘う。そんな日常(?)の中にも、ふとシリアスな瞬間が訪れ、「愛が憎しみに変わるのをいくつも見てきた」などと素晴らしい決め台詞が挟まったりする。これがお笑い要素ではなく真剣味を帯びて語られるのがいい。笑いと苦みとが交互に現れ互いを引き立てる。
殺し屋と依頼人の会話の意味付けが、それと並走する形で、本業の哲学講義の中で、学生たちに向けた質疑の形で行われる。この二重構造の仕掛けも上手い。いやでも奥行き感が出てくる。
そんな風に上手く世渡りをしているように見える主人公だが、逮捕起訴された依頼人たちの公判に証人として列席するときは神妙だ。相手の弁護士に倫理観を問われて、自分は仕事をこなしているだけだと思わず声を荒げてしまったりするあたりに、彼の内心忸怩たる思いも見える。
そんな彼がある日、依頼人の女性にかけた情けから愛が芽生え、物語が動きだす。それだけで済むならいい話で終わるのだが、そうは問屋がおろさない。この先は見てのお楽しみ。嘘から出たまこととでも言うべき展開に直面した彼の処世の哲学が試される。本業の講義の中では、彼の行動の理論的支柱が先行して示されている。
この物語の結末を善きと感じるか、嫌悪を覚えるか、大袈裟に言えば観客も試されているのかもしれない。作り手は、愛が人を変えたと締めくくっている。確かにそうかもしれない。
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