「墓泥棒と失われた女神」
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タイトルからどたばた喜劇を想像していたけれど、結構しんみりする内容だった。
唯一無二の不思議な能力を持つ男が、それを生かす正道を見つけられず、墓泥棒のお先棒を担ぎながら裏街道を歩いていくものの、最後に正しい生き方に目覚めるといった感じのお話。
こう一言で言ってしまうと味も何もないのだが、少しづつ種を明かしながら見せていく組み立てがうまい。墓泥棒の生き方を必ずしも否定せず、仲間意識や冒険の楽しさや、隠しきれない罪の意識、取り返しのつかない切なさを、仲間内の吟遊詩人に歌わせてもいる。
そのうえで、主人公が最後に選ぶのは、亡き恋人が残した人のありようだった。結末のシーンは少しジンとくる。
冒頭のシーンを、中盤で回収するやり方に意外性があって面白い。それが、主人公が生き方を改めるひとつのきっかけにもなっている。
孤児を育てる女性のストーリーラインと墓泥棒のラインとが、終盤近くまで交わらずに進むのを忍耐強く待つことができれば、最後の一瞬で美しい果実が得られる、わりといい作品でした。
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