「マッドマックス:フュリオサ」
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約2時間半の上映時間はあっという間だった。そうしてみると、これはよくできた作品だし十分楽しめたと言える。ただ、思っていたものとは違っていた。
考えてみれば、Fury Road でアクションの究極を堪能させてもらったのだから、本作がそれの焼き直しであるはずはなかった。
ではこの作品は何なのかというと、よくわからない。もちろん復讐という分かりやすい説明はあるけれど、私としては少し違う点に注目したい。それが、ディメンタスという、本作のために用意されたキャラクタだ。
バイク軍団のボスであり、荒廃した世界で生き抜くために他者を犠牲にすることを何とも思わない。残虐と巧言を使いこなして荒くれどもの集団を統率し、生き延びる戦略を考えイモータン・ジョーと取引し、最後は対決して敗れ去る。
この男の刹那的な饒舌は、最初は群衆をよく扇動して秩序と力を生み出したのだが、内実がついてこなかったために次第に破綻していく。彼は多くの人間を集めたが、集めたからには食わせていかねばならない。だがそんなリソースはこの荒廃した世界にはそうはない。水と食料を抑えている「砦」との争いは必然だった。
争いに敗れた彼は、それまでの非道の罰を受ける。饒舌の根を断ち切るという罰を。彼の甘言が群衆を扇動することは金輪際なくなった。
この結末からは、フェイクが大手を振ってのさばっていることへの怒りを読み取れる。それが本作の狙いのようにも思える。
もちろん、手を下したのはフュリオサだから、彼女の復讐譚の第一部としては一応成就した形になっている。けれども、誰がというのはあまり重要とは思えない。彼女の怒りには普遍性があるからだ。それは本作ではディメンタスの虚言に向けられ、前作ではイモータン・ジョーの女性差別に向けられている。
まあ、いろいろ言ってみても、やはり前作に比べて複雑で、少し作った感が滲んでしまっているかもしれません。脚本家のストライキの影響でストーリーを十分練り込めなかったのでしょうか。そうだとすれば少しもったいなかったかもしれません。
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