「NN4444」
https://eiga.com/movie/101075/
4本の短編不思議映画。ホラーという触れ込みになっているけれど、むしろ不思議と呼びたい内容。
「犬」
これが一番わかりやすい。いわゆる勝ち組と負け組の断絶と、負け組の魅力のようなものを描いている。
本作中の勝ち組の描き方はステレオタイプで、そこには焦点が当たっていない。
一方負け組は働いたら負けという価値観だから、勝ち組とはそもそも言葉が通じない。そこを突然の「ワンッ」という言葉で表現している。まあ、そういう作品。
まじめに働いて社会に貢献して自分の地位や収入を上げていくという価値観に対して、是か非かというのが分かれ道だが、疑問の余地なく是という立場からはよくわからないかもしれない。負け組の優位性としてひとつ挙げるとすれば、自由、ということがあると思うけれど、本作には自由の様々な態様が盛り込まれていて魅力的だ。
本当にそんなに自由に生きられるわけもないのが自明だからこそ、力強く成立しているような作品でした。
「Rat Tat Tat」
それなりの格式の家において、嫁の立場は世継ぎを生むことで確立されるのだろう。もし流産などすればどういう立場に置かれるか、庶民のわれわれは想像するしかない。
本作はその針の筵のような立場を、コミュニティの成員の無言の手拍子だけで表現している。
拍手というのは心温まるものだし、手拍子には励ましの力があるけれど、それがふと行き過ぎると恐ろしい強迫的な力を持つことになる。本作にはそれが目一杯表現されていて脂汗が出ます。
「VOID」
わりとありがちな作品。多感な思春期の少女たちの中に、ふとした拍子に亡くなってしまった友達の記憶が影を落としている。教師の形をとって徐々に輪郭が現れてくる現実の理不尽さと、生まれてからこれまでの短くて輝くような命の儚さとがせめぎあっている感じ。この先どちらに転ぶのかは誰にもわからない。
ふとした拍子に均衡が破れると、儚い命はあっさり終わってしまう。そんな風な作品。
「洗浄」
これが一番ホラー味がある。湖で何かに取り憑かれてしまった男から、穢れたものが仲間に次々伝染していく。狂気のようにうがいで洗い落とさずにはいられない。その穢れははじめは湖の水から来たように見えて、その実、彼らの内に初めからあったものだ。そのことが惨劇が進むにつれて徐々にわかってくる。そしてその穢れを忌み洗い落とそうとしている者も、終局に向けて彼ら彼女らの表情の中に確信を持って現れてくる。
湖の深みへと歩みを進める最後の男が、振り返ったときの表情が絶品だ。
「お前だな、これの原因は」
「助けてくれ、見逃してくれ」
声なき声で振り絞るように叫びながら、抗うこともできずに溺れていく。
恐ろしい、と思わせる迫力がありました。