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2024.04.21

「ブルックリンでオペラを」

https://movies.shochiku.co.jp/BrooklynOpera/

久しぶりにいい映画を見たなという満足感に浸れる映画。邦題には苦労の跡が感じられるが、かといって「SHE CAME TO ME」という原題を適切に日本語訳するのは難しい。でも見た後、ああたしかに冒頭で映し出されたこのタイトルのとおりだったなと納得する。まさに、She came to me. な物語。

それだけであとは余計なことは言わない方がいい気がするけど、少しだけ蛇足を。読まずに見るのが吉です。

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まあまあセレブではあるけれど仮面関係の夫婦が、初めにいい味を出していて、これは彼女が本当の愛に目覚めるお話かと思った。そう思わせるに十分な尺を使って夫婦の間の力関係が巧みな描写で盛り込まれていた。

だからそこへ降ってわいたようなストーカー女は、夫婦の物語を盛り上げる薬味に見えたのだ。極めて自然な流れで、配役もそれを暗示しているので、この時点でもう作り手の術中にはまっている。
で、このエピソードは薬味らしく一旦終わる。

並行してZ世代の恋人たちが登場する。一人はこの夫婦の妻の連れ子だ。この二人の関係が問題化する形でマチスモや訴訟社会という米国の病を批判的に見せつつ、それに対抗してZ世代がどんな解決を模索するか、それをリベラルな良識ある米国人として義理の父である仮面夫婦の夫が見栄も外聞もかなぐり捨ててどう力を貸すか。それは見てのお楽しみ。状況や印象が滑らかに急転回して、ああ、そうなるのか、という変容の加速感が素晴らしい。まさに She has come to me.

エピローグのオペラ観劇で、カーテンコールのように登場人物の顔が順番に映し出されていく中で、そういえばもう妻の方はとうに印象から消え去っていたなと思ったら、最後にちゃっかりと・・。声を殺して爆笑してしまいました。

かくして、皆それぞれに本当の自分を見出して大団円と相成りました。アン・ハサウェイならではの堂々たるユーモア溢れる締めでしたね。トリを務めるのはこの私と決まっているんだからねうんうん。お話、面白かったでしょ?

最高です。

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