「オッペンハイマー」
https://www.oppenheimermovie.jp/#
科学と政治と思想とが入り乱れて緊張感のある3時間だった。
脈絡のないようにも思える各カットが、こうして繋ぎ合わされることで、この物理学者の人間としての総体が立ち現れてくるようで、クリストファー・ノーランはいい仕事をしたと思う。
この作品について、広島とか長崎とかをことさらに取り上げようとするのは間違いだ。また、作品の細部について、被爆国の心情からあれこれ解釈を加えることにも違和感がある。
そうではなく、これは開発主体である連合国の科学界が、どんな世界情勢のただなかで、政治の世界からどんな働きかけを受け、どう目標を設定し、どんな葛藤や軋轢を抱えながらそれを完遂したか、そして後年、この人物が、自ら解き放った恐るべき力をどう思うようになったか、そういうストーリーとして丸ごと受け止めるのがよいだろうと思う。
ただ、こうした新兵器の開発は最先端の科学者にしかできないとしても、いったん出来上がったものを発展させ運用することからは、当の科学者たちは遠ざけられるという冷徹な事実があったことは、知っておいてよいと思う。