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2024.02.10

「ブルーアイ・サムライ」

www.netflix.com/title/81144203

良い意味で期待を裏切られた力作。絵の緻密さ、動きの切れ、人物の微妙な表情の変化、そして物語の展開と登場人物の心情の変化、どれをとっても素晴らしい。

NETFLIXのお薦めでしきりに出てきた時期に、ちょうど鬼武者など同じジャンルで知名度のある作品とぶつかったのはやや不運だったが、結局両方見た目から言うと、本作の方がエンタテイメントとして数段上だ。鬼武者は子供向けの趣だが、本作には、子どもには見せられない表現の深みが備わっている。

それは、主要な登場人物の愛憎の移り変わりであったり、野望の芽生えであったり、支配の論理であったりするのだが、どれも奥行きがあってよい。

中でも私が気に入ったのは、置屋の女将が諭す抵抗の哲学と、それを語るときの微妙な表情の変化をあますところなく表現するアニメーションだ。ディテールに神が宿っている。
ほかにもたくさんあるのだが、もうひとつだけ挙げるとすれば、主人公が剣父と仰ぐ盲目の刀匠だ。彼が語る話は一見ありがちに見える内容なのだが、よく耳を澄ますと、物語が進むにつれて深みを増していくように聞こえる。

愛憎の変遷というと、幼少期からの因縁のある二人の絡みに加えて、主人公が敵と狙う渡来人との最後の闘いの展開が興味深い。勝敗が見えたかに思えたその瞬間、相手が出してくる奥の手に主人公が乗る形で、決着は持ち越され、ある種の協定が成立したようにすら見える。こういう面白さは、大衆向けに子供にもわかりやすくつくられた作品には決して見られないものだ。

たいへん満足度の高い作品でした。もし続編を出してもらえるなら、今度は迷わずいの一番に見たい。

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