「ヴァチカンのエクソシスト」
https://www.vatican-exorcist.jp/
エクソシストものを見るのは十年ぶりくらいだろうか。前に見たのは「The Rite」。心に残る美しい映画だった。
本作は、仕上がりはわりとあっさりしていて、脂汗も書かないし心臓がばくばくしたりもしない。この種のものでゲテモノ指向のは、どんでんがえしが何度もあったり味方が敵になったり一件落着と思った後に最後の惨劇が幕を開けたりと見ている方の体力を削りに来るのだけど、そういうエグさはない。
ここで語られているのは、悪魔に立ち向かう人間臭い神父が、過去に犯した罪の意識を克服する物語だ。若い司祭と二人、地下の遺構で闘いの小休止の間に行う告解で、その罪を述懐する。神の赦しという考え方を、我々非キリスト教徒にもわかりやすく見せてくれる。
こういう話はとてもよい。十年前の「The Rite」で、悪魔に圧倒されかけた神父見習いを救ったのは、彼が子どもの頃に感じていた母の愛の深さだった。闇の中でただひとつ輝くようなその映像のシーンは鮮明に覚えている。
本作はそれとは違って、中年おやじの若い頃の失敗と、それで死なせてしまった女性への申し訳なさでむんむんしていて、美しくもなんともないのだが、そういうものの中にある真実味を感じられるようになったのは、順調に歳をとってきた表れだろうか。憮然とするしかない(笑
あとは、本作には少し夾雑物が多いのが欠点といえばそう。思わせぶりな拷問器具とかは結局意味がなかったり。
ただ、中世の異端審問というむごたらしい人権蹂躙の歴史を、悪魔に憑依された聖職者の仕業にしていたのは、発想としては面白いか・・ちょっと責任逃れのようでもあるけれど。神は赦したもう。
最後に、事件を解決してヴァチカンに戻ってきた主人公の前で、法皇猊下がにやーっと笑って悪魔に憑かれたことがわかってしまうというどんでんがえしの結末をちょっと期待したのは、「The Rite」の結末の悪影響だろうか(爆