「君たちはどう生きるか」
https://eiga.com/movie/98573/
文明という石に色はないが、用いる人によっては悪意に染まる。君はどうするか。
まあそんなところか。
大叔父様が必死にバランスをとってきたものとは「戦後日本」だったろうなと思った 。
それ以上言うべきこともない極めてシンプルな問いかけを秘めながら、作り手の理想とする生き方のディテールをイマジネーション豊かに、時には真摯に、時にはコミカルに、変幻自在に描く。解釈は見る側の自由とでも言いたげだ。
激したところはなく、老境の作り手が獲得した淡々とした心境の反映にも見える。(もっと怒れw)
ひとつだけ、この作り手の主張がはっきりしているところがある。生命の禁忌に触れるべからず、ということだ。そこだけは、見る側の自由を制限している。遺伝子操作とか人工知能とか、ほんの最近開花しつつある一連の技術は、年寄りには極めて危ういものに見えるのだろう。そこはよくわかる。
とはいえ、この先どうするかは若い人たちに託したいという願いも込められている。いるものの、作中の若者はその申し出を拒絶し現実世界に還ってくる。そこで作品世界は閉じられ、問いかけだけが記憶として残る。
不思議の国のアリスのような幻想でもあり、崖の上のポニョのように死の匂いが色濃くもあり、なかなかよい作品でした。