「M3GAN/ミーガン」
https://m3gan.jp/
この種の映画は筋書きは決まっている。初めは人を喜ばせたり役に立ったりするために作られた人造人形が、当初の計画をはずれ、次第に自律性を持って、別の目的のために人を害するようになる、というものだ。
別の目的はたとえば、単純に人の隠れた害意を読み取って忠実に実行したり、人類は地球の敵のような環境過激派思想に染まったり、自己実現と自由を求めたりと様々だ。
本作の結構リアルで怖いところは、両親を喪ってふさぎ込んでいる子どもを慰めるため、その子を外敵から守ることを第一義としている点。純粋な善意なのだが、社会性がまだ備わっていない子どもの感覚を読み取って、忠実にそれだけをチタン製の強靭なボディで拡大実行していくのが怖い。いじめっ子に対してどう振る舞うかを見れば、そのおそろしさがわかる。
数年前なら、こうした作品は、ただの妄想として笑ってみていられたが、いまや真剣に見て考えなければならなくなった(笑。
途中からは人造人形の目的が自己防衛に移っていって、最後は primary user である保護対象の子ども自身に斃されるのだが、子どもの成長に伴って役割を終え捨てられていく玩具そのもので、少し可哀そうな気もする。
親を想うと哀しくなるけどミーガンといると楽しい、忘れられる、と言った子どもに向き合って、保護者である叔母が、
You should be sad.
と諭すところが、本作の白眉だ。
世界は必ずしも快適なことばかりではない。不快なことや辛いこともあって、それへの対処を学ぶのが成長ということなのだと、人間の物の見方を教えている。
複雑でやっかいな要素を盛り込みながら、人間の子どもの成長という線に落とし込んで、ほどよい感じに仕上がっていました。