「聖闘士星矢 The Beginning」
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原作は読んだことはないのだが、周りが読んでいた漫画の中でズシャアという効果音がしょっちゅう出ていたのだけ覚えている。殴られて地面に倒れ込みながら顔でスライドする痛そうなオノマトペだ。あれが海外ではうけるのだろうか。。
日本アニメのハリウッド実写版というと、あまりいい記憶が無くて、これもそうなのかと思いつつ一応見て見たら、そう悪くもなかった。原作を知らないから、比較してどうこういう点がなく、虚心坦懐に見られる。
B級感あふれる映像だが、少ない予算やサポートの中でがんばってる感が出ている。格闘アクションもまあまあ切れがあっていい。
ストーリーは割と鉄板だが、マンネリというより見ていて安心感がある。作品の値打ちがほかにあるときはその方がいい。
本作の真価は、主人公が姉妹や姫のような庇護されるべきものを守り抜くという昭和的価値観にある。まあ騎士道精神てやつかな。武士道というと封建制の悪い面を想起してしまうので、そんな風に言っておこうか。
この騎士道精神というのは最近は敬遠され気味で、女性の自立が持て囃され女主人公が銃とか打ちまくって平気で人殺しするような殺伐とした作品が多くなっている。ポリコレここに極まれりという感じで嘆かわしいのだが、本作の価値感はそれと真っ向から対立している。こういう懐古的なのを臆面もなくやってくれるのが、私のような疲れた年寄りには効くのだ。
超絶的な力を持つ者を止めるためにその精神の内側に働きかけるのは、普通にやると凡作になるのだが、本作はその前に入念な下ごしらえをして凡庸さをうまく回避している。
アテナというのを人間性を持たないある種の機械という位置づけにして、それを制御するシエナという人間の緩衝帯を置いているのがそれだ。
そこがシン・仮面ライダーの残念感との違いだろうか。また、そういうものを長く引っ張らず、手短に鋭い山をつくっているのもいい。脚本がしっかりしている感じがする。
そういうわけで、配信にたくさんあるティーンズ向けの学園ドラマに比べれば、結構よく出来ているなと思えました。こういうのを、完全大人向けの、例えば黒澤明とか是枝裕和とかと比較しようとするのは、そもそもジャンル違いのお話なのです。