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2023.04.23

「アニアーラ」

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一風変わったSF作品。SFというより、Sfを小道具として使い、宇宙空間を永遠に彷徨う人工空間を作り出して、そこに生きる人々を描写するという作品。
原作は、スウェーデンのノーベル文学賞受賞作家ハリー・マーティンソンの代表作だそう。

この宇宙船のデザインがなかなかよい。細長い長方形の巨大な板なのだ。およそ宇宙船という感じがしないが、シャープで、これこそ八千人を乗せた移民船という印象だ。重力は人工的に作り出す技術があることになっている。また、食料は備蓄が無くても藻を生産することで半永久的に供給できる。

しかしそうはいってもたかが八千人。閉鎖的で外部の開放系を持たないこの空間で、人々は疲弊し、様々な病理に取り憑かれる。エイリアンなどを登場させるよりよほどリアルで、1991年に行われたというバイオスフィア2の実験を思い起こさせる。

活劇の要素はないものの、その代わりに、年単位の時間が流れる中で、狂気や偏執、希望と絶望などが入れ代わり立ち代わり現れる様が描かれる。アメリカ映画のようにすぐ殺し合いになるわけではないが、北欧スウェーデンらしい理性とその崩壊がある。

そんな中で、技術者の女性が比較的淡々と理性を保ちつつ可能な範囲の仕事をこなして時間をやり過ごしていく強さが目立つ。だがそんな彼女も24年という歳月の終わりには、神に祈るようになる。

これと言った結論めいたものはないのだが、自分達の社会がどれほど外界との関わりによって救われ保たれているかを実感できた。

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