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2023.02.19

「梅切らぬバカ」

https://www.netflix.com/title/81644021

NETFLIXで。

公式サイトによると、『ことわざ「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」とは? 樹木の剪定には、それぞれの木の特性に従って対処する必要があるという戒め。転じて、人との関わりにおいても、相手の性格や特徴を理解しようと向き合うことが大事であることを指す。』
だそうな。知らなかった。

49歳の自閉症の息子を持つ母子家庭が本作の中心にいる。ステレオタイプに考えれば、公的扶助を受けながら苦労の多い生活だろうと思いがちだ。

本作の母と息子は、たしかに近隣への遠慮気遣いで気苦労はあるものの、都会の中の一軒家の持ち家に住み、母は名の通った占い師とあって、経済的な不安はなさそうだ。実際にはその問題が大きいところをさりげなく解消しておいて、心置きなく人々の人間模様に的を絞っているのがうまい。

この母子と、隣に引っ越してきた家族の母と子が、はじめはぎこちなく他人行儀だったのが、次第に言葉を交わすようになっていく過程に、温かみと相互理解が織り込まれていく。なあなあのもたれあいではなく、言うべきことはすっと言う筋の通ったさっぱりした関係の中での温かみで、それがとてもいい味わいになっている。

この母子家庭は、近隣からはあまりよく思われていない。それはそうだ。50になろうかという一見大人が自閉症のままでは誤解も多かろう。梅の枝は適度に剪定するのがよいというのが周囲の本音で、自閉症児がおこしたちょっとしたトラブルから、施設の立ち退き要求運動が巻き起こるのがその偽らぬ発露だ。

もちろん、非難される側の母にしてみれば、そんな簡単に切れるわけもない。自分が先立った後、一人では生きられないだろう息子のことを想って施設に預けようとした母の心根は、少しじんわり来るけれども、結局施設に居られず息子が戻ってきて、はじめてその大切さ、かけがえのなさに気づくところが、本作の山だ。

結局、問題はちっとも解消に向かっていないけれども、悪くもなっていない。きっと明日もなんとかなると思わせるような、日常を描くところで終わっていて、後味もいい。

ままならぬ隣人との関係のお手本にしたいような良作でした。

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