「非常宣言」
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機内感染のパニック映画。公開されたのは2021年だから、極めてタイムリーだったと言える。
映画ではなく現実でも、客船の寄港を巡って現実のドラマが繰り広げられたのが記憶に残っているが、本作は舞台を燃料切れで墜落の可能性がある旅客機に設定することで、客船の事件よりもさらに緊迫感とスピード感を持たせている。
お話の方は、感染症という災害で起こりうる葛藤とドラマをすべてつぎ込んでなお、破綻なくまとめ上げるという力技を駆使しているのに、そういう力みを感じさせないスムーズな話の運び。作り手の高い技量が感じられる。
万策尽きたあとに乗客たちが一致して出した結論が、現実には決して起きないがいかにも起こりそうな落としどころで、踏み切っているのがよい。とはいえ、たしか911のとき米議会か大統領官邸に突っ込もうとした旅客機を乗客たちが命を懸けて別の場所に墜落させた歴史的事実があるので、覚えている人には多少割り引いた感じにはなる。
それを含め、本作は様々な要素を寄せ集めて緻密に計算されているため、却って感動のポイントを絞りにくい印象もある。
欲を言えば、なにかもっとぎらつくような突出した人間性の発露が欲しかったかもしれない。もちろん、地上で焦りを募らせる刑事の行動がそれだと言うこともできるのだが、どうもその決断までのプロセスが少し弱かった。いろいろ詰め込み過ぎの弊害なのかもしれない。
すごいけれど、たぶん記憶には残らない。そういう作品に思えました。ほんと傑作を作るのって難しい。