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January 2023

2023.01.29

「ノースマン 導かれし復讐者」

https://northman-movie.jp/

仇討ちをネタにしたありがちなヴァイキングのアクション映画と思いきや、なかなかすごい愛憎劇だった。お話は二転三転して、その間、悪人と善人、高貴なものと下賤なものが、立場を変えて入り乱れる。そして最後はあっと驚く決着に至る。観たあとちょっと眩暈を覚えました。王族とかに生まれなくてほんとによかった。

展開はゆっくりなので、最近のテンポの速い映画に慣れていると少し退屈に感じるかもしれません。

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2023.01.23

「非常宣言」

https://klockworx-asia.com/hijyosengen/

機内感染のパニック映画。公開されたのは2021年だから、極めてタイムリーだったと言える。
映画ではなく現実でも、客船の寄港を巡って現実のドラマが繰り広げられたのが記憶に残っているが、本作は舞台を燃料切れで墜落の可能性がある旅客機に設定することで、客船の事件よりもさらに緊迫感とスピード感を持たせている。

お話の方は、感染症という災害で起こりうる葛藤とドラマをすべてつぎ込んでなお、破綻なくまとめ上げるという力技を駆使しているのに、そういう力みを感じさせないスムーズな話の運び。作り手の高い技量が感じられる。

万策尽きたあとに乗客たちが一致して出した結論が、現実には決して起きないがいかにも起こりそうな落としどころで、踏み切っているのがよい。とはいえ、たしか911のとき米議会か大統領官邸に突っ込もうとした旅客機を乗客たちが命を懸けて別の場所に墜落させた歴史的事実があるので、覚えている人には多少割り引いた感じにはなる。

それを含め、本作は様々な要素を寄せ集めて緻密に計算されているため、却って感動のポイントを絞りにくい印象もある。
欲を言えば、なにかもっとぎらつくような突出した人間性の発露が欲しかったかもしれない。もちろん、地上で焦りを募らせる刑事の行動がそれだと言うこともできるのだが、どうもその決断までのプロセスが少し弱かった。いろいろ詰め込み過ぎの弊害なのかもしれない。

すごいけれど、たぶん記憶には残らない。そういう作品に思えました。ほんと傑作を作るのって難しい。

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2023.01.15

「カンフー・パンダ: 龍の戦士たち」

https://www.netflix.com/title/81227574

シーズン2全12話

パンダと熊の道中をコメディタッチで描いて安定の面白さ。シーズン2の舞台はインド・・なのだけど他にも南洋の島やらアステカ文明風の何かが出てきて目を楽しませてくれます。

子供向けということもあって色彩が鮮やかで、思わず目を奪われます。中でもカエルを擬人化したキャラクタの造形と色彩が秀逸。パンダや熊の地味な色や形と好対照です。

カンフーパンダのポーは相変わらずのずっこけキャラの役回りですが、ずっこけながらも寛容と忍耐を示して大勢の人々をまとめる立ち位置です。そして熊のルテーラの成長がシーズン2のお話の主軸に来ます。今回、積年の敵であるイタチ兄妹についに一人で打ち克つのですが、彼女は彼らを殺さずに放してやります。

4つの武器もとうとう揃ったところで、世に災厄を齎すそれらを破壊するために、最終目的地イングランドへと旅立ちます。ポーの義理のお父さんの意外な過去の因縁で、次の道中は新たな敵、海賊との闘いになるのでしょうか。そして旅の終わり、イングランドではもちろん、放してやったイタチ兄妹との最後の決着が待っていることでしょう。

話の展開や登場人物達の意外な綾が面白く、絵の良さもあって、毎回次が楽しみな作品のひとつになりました。

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2023.01.08

「嘘八百 なにわ夢の陣」

https://gaga.ne.jp/uso800-3/
 
え何これ。お笑いなのに最後泣かせちゃうのこれ。泣いちゃいましたよ。正月からいい話聞いたな。そんで最後の最後に全部仕掛け屋の企みつまりうそぴょーんていう種明かしをちょっとだけ。ずるいぞー。
 
こういう話にぴったりの言葉がそういえばありましたよ。
 
「嘘から出たまこと」
 
三年目の今年も、このシリーズの良さが巧みに織り込まれて、いい味に仕上がってました。
 
 
価値とは、という問いは気軽に言えそうで、その実、難しい。普段の生活ではとりあえずの方便として金額に換算して考えがちなそれが、実は、人が見る様々な夢の値打ちであって、状況や経緯、つまりは物語の如何によってどのようにでも変わり得るということを、本作では、手間暇かけて文脈を練り上げた頂点の舞台で、あやしげな贋作屋の口上を借りてきっぱりと言わせている。
 
前二作では、やや曖昧にも見えたこの点を、三作目の今回は鮮やかに言い切っている。贋作と人は呼ぶけれど、数百年前にその器に込められた思いと、今日ただいまの人々の思いとに真贋の違いはないということを、この贋作屋は己の身命を賭して発語している。
素晴らしいです。
 
そして、その物語を整えて盛り上げて見せるのは、贋作屋のちょっとしたおまけ、マーケティングスキルですよと最後にウインクして見せる。憎いですね。さらに、全部が仕組まれた予定調和でもなく、関わる人々の微妙な綾が織り込まれて、偶然性とも共鳴している。
 
毎年初めにこのシリーズを見られるのは大変幸せだなあとつくづく感謝しております。来年は台湾ですかそうですか。平和な気持ちで四作目を見られるよう願っております。

 

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2023.01.03

「つみきの家」

https://amzn.to/3vzfpwE
 
amazon Primeで。12分ほどの小品。
絵本の原作がある。
 
年老いた男がひとり、小さな水上ハウスに住んでいる。水は年々上がってきていて、床が浸水するたびに、男は屋上に煉瓦を積み増して上へ上へと引っ越していく。
 
そんなある日、ふとしたことで床に開けた魚釣りの穴から愛用のパイプを落としてしまい、それを切っ掛けに、床の穴から穴へ辿りながら、男は深く潜っていく。それは男の人生の様々な記憶のステージを遡っていく旅でもあった。
 
過度に感傷的になることなく、子や孫、そして在りし日の妻や、若かった自分達を思い出していく、ほのぼのとした絵で綴る思い出の一日。そういった趣の小品でした。
 
このコンセプトの作品はたくさんあると思うけれど、本作は水面が上がるにつれて上へ伸びていく住まいというアイデアが秀逸です。水面下に沈んだ古い床ひとつひとつに降り立つたびに、そこでのかつての生活が思い起こされる、胸を打つ仕掛けがすばらしい。

 

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2023.01.02

「岸辺露伴は動かない 第1期」

https://amzn.to/3YXQ397
amazon Primeで。全3話
 
役者それぞれの個性がこの荒唐無稽なお話によく合っていておもしろい。
 
第3話 DNAという話は、ほのぼのしてよかった。といっても、わりとありがちなストーリーではあるのだけれど。ひょっとするとブラックジャックあたりにネタ元があるだろうか。
 
早回しで見ても大丈夫そうだけれどアマプラにはその機能がなさそうなのがちょっと残念。

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2023.01.01

「ナイブズ・アウト: グラスオニオン」

https://www.netflix.com/title/81458416
 
NETFLIX
 
ダニエル・クレイグを看板にしているので、一応見るのだが、一作目と比べるともうひとつ。基本的に権力者や金持ちの悪事を世界一の探偵の力を借りて庶民が暴くカタルシスといったあたりがシリーズのコンセプトのようなのだが、本作のやられ役の金持ちは頭も悪いし行動もずさんだしで、見るに堪えない。悪役が強く緻密で周到であればあるほど面白くなるタイプの作品なのに、その基本が弱い。
 
まあ、時間があったら見てもいいか、くらいでしょうか。
 
ただ、ちょっと面白いことがひとつあって、本作にはこの似非金持ちの次なる大儲けの種として個体の水素燃料が出てくるのだが、欧米の人間が水素エネルギーをなんとなく敬遠しているのが感じられたこと。ひょっとするとヒンデンブルク号がいまだに社会全体のトラウマになっているのかもしれない・・んなわけないか(笑

 

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