「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」
https://www.pinocchio-jp.com/
NETFLIXで。
原作は実は1881年にイタリアのこども新聞に連載されたものらしい。ディズニーアニメはそこから残酷な描写を省くなどして出来上がったものだそう。
本作はというと、原作から様々な着想を得て作られているように見える。そして、本作独自のアレンジは、ゼペット爺さんに人間の子供がいて、悲劇的な亡くなりかたをした後にピノッキオがつくられた、というところ。ピノッキオがなろうとするよい子のイメージは、最初はこの亡くなった子供に重ねられている。
それが、お話が進むにつれて、よい子であることよりも、ピノッキオ自身のアイデンティティが善きものになっていくことに焦点が移っていく。それが最後にゼペット爺さんの感動的なセリフにつながっていく。
このあたり、タイトルにあるとおり「ギレルモ・デル・トロの」作品として終始一貫していて、単なる翻案のレベルを超えて高い完成度になっている。
また、遊んで暮らせる国が、第一次大戦時の少年兵の訓練に差し替えられているところも、作り手が本作を「自分の」作品ととらえている意識が感じられる。これが原作やディズニーアニメの焼き直しではなく、それらにインスパイアされながらも、独自の作品として成り立っているのが強く感じられる。
ストップモーションアニメであるのをつい忘れるような自然な動きと、登場する生き物たちの味わい深い造形とが相俟って、いつのまにかデル・トロの思い描く物語世界に引き込まれる。
よく知られた、記号化されたピノキオの話ではなく、人形が人間に生まれ変わるために何が必要か、それが周囲をどれほど変えていくかを、温もりのあるまなざしで描いた、一級の作品でした。