「窓辺にて」
初めから仕舞まで落ち着いたトーンの傑作会話劇。基調が落ち着いているからこそ感じ取れる微妙な揺れや起伏にじんわり癒される。日常の暮らしから生まれる凝りや歪みを優しく揺さぶって正しい位置に戻してくれる整体師のよう、とでも言うか。
創作する人の内面と、創作を取り巻く環境とを様々に見せて内容も豊かだ。その豊かな感じがまさに文学というものを表しているようにも見える。この作品をそのまま小説で読んでも面白いだろうと思える所以だ。
交わされる会話の背景となる舞台も固定せず、中身に即してまめに入れ替わる。話されるべき言葉を予感させる場の設定もしっくりくる。
そして、主人公が創作をしなくなった理由の答えを、最後にストーリーの自然な流れの帰結として教えてくれる。なるほどと思わせる余韻を残して終わる。
かと思いきや、そのまた後に、んなわけないだろと言わんばかりに、日常を生きる普通の人の生き生きとしたわかりやすい不安や喜びに引き戻して、病的でわかりにくいブンガク的世界観を払拭してくれる。やられましたね。
人それぞれに、背負っているもの、抱えているものがあり、それを背負い抱えたまま、あるいは別れを告げたり逃げたり乗り越えたりしながら、今日もまた生きていくのだということを、しみじみ感じさせてくれる、得難い作品でした。
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