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2022.09.04

「ブレット・トレイン」

テントウムシにそんな意味があったなんて知らなかった・・
それはさておき。
これもしかして傑作エンタメ じゃね?
と言いたくなるような出来の良さです。(原作があるんですね)
 
因果はめぐり、綾はもつれて、人々の来し方行く末をはかなく映し出します。次は誰が殺されるんだ?
 
途中、ペットボトルの水が転がりながら走馬灯のようにこの顛末の一区切りまでをおさらいしたりもします。
センスいいな、と思います。
 
そして、キャラがすごく立っている。特に似ても似つかない外見の双子がいい。ひょっとすると主役はむしろこの2人で、表向き主役の男はナレーターです。第三者的な立ち位置からこのもつれを見、ときには自分も巻き込まれながら、世の無常と心の平安を説いたりします。説法師ですか。
 
そもそもこの主役は、自分はエース級の人間の代役だと最初から言っています。療養から戻っての復帰戦だと。そして自分は死なない代わりに周りの誰かが必ず死ぬ悪運を持っているのだとも。それって場の外の傍観者の立場です。
 
いや、まあ主役の件は少し言い過ぎです。たぶん、切り替わる複数の視点が同じ程度の主体性を持っているのでそう感じるのだと思います。
 
主役の男、双子、そしてペットボトルにさえ、それぞれの独自の視点があり背景があり思惑がある。そのそれぞれを各自の視点から活写している。面白いですね。そして味わいがあります。
 
生きることに肯定的な殺し屋たちと、生きることに疲れているけれどそれでもなんとか前向きにやっていこうとする男と、業にまみれた曲者たち、そして厳しくも家族愛にあふれた任侠道を生きる親子。彼ら彼女らがくんずほぐれつしながら弾丸列車という限られた空間で繰り広げる探偵もののような演劇。命のやり取りをしているのにどこかひょうげた雰囲気を漂わせながら、緩めるは緩め締めるは締めてリズムを生み出し最後はお日様のような温かさを感じさせる物語。それがこの作品です。
 
もう一度言いますが、これは眉間の皺をほぐす傑作です。

 

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