「(r)adius」
amazonPrimeで。2017年の作品。
半径15M以内の生き物が死に絶えるという能力を突然得た男と、それを無効化できる女という、随分作為的だが面白そうな設定を持つ作品。
周りの生命を殺してしまうという性質は超常現象でもたらされたものだが、物語としては、失われた記憶の中に隠されたこの男の恐ろしい性癖の暗喩になっている。そこがなかなか渋い。唸らせる。
そして女の方は、その呪われた運命のいわば救いの手となっている。果たして女は男を救えるのか。表向きは警察からの逃避行だが、実は女による男の救済という線に沿ってお話は進んでいく。男がこれ以上命を奪わないように行動する彼らの様子は、まさに差し伸べられた救いの具現化だ。
それは報われたともいえるし、そうでないともいえる。男の最期を見れば救いは成就しなかったように見えるが、しかしトラブルに見舞われた女を死の淵から救う善行を成したことで、この男は運命を受け入れ救われたということもできる。観る人によって解釈は様々だろう。
とまあこのように、かなり宗教的な要素を孕んでいて、それに気付けば全体を見通せるが、そうでないと、特殊能力や記憶喪失やサイコパスなどの各要素がばらばらに見えてしまいかねない、やや難しい作品ではありました。