「東京2020オリンピック SIDE:B」
これは何と言うか、いい映画です。
もちろんあのオリンピックは、普通でなかったことは確かで、それゆえに批判も多かったと思うけれど、そうした俗世の穢れを超えて、この作品はよい。
そのわけは、裏方に多くの光をあてて、マネジメントの良し悪しに依らず現場の強靭さでものごとを何とかしていくという我々社会の特質を浮き彫りにしているから。そして、100年後にもそれを受け継いでいってほしいという願いを込めているから。単なるドキュメンタリーに納まらずその先に踏み込んでいる。
コロナ禍に翻弄される中での進行は本当にたいへんだったろうと思う。加えてマネジメント層の女性蔑視発言や広告屋のデザイン盗用などが追い打ちを掛け、やる気がダダ下がりしておかしくない状況だったけれど、関係者は粘り強く仕事をした。
その経過を、SIDE:Bで運営側の敢闘を描く構成で、SIDE:Aで描かれた選手たちと同じ重みを運営スタッフたちに与えたのは、とてもよかった。
この大会は実に様々な課題、時代の節目を炙り出したわけだけれど、それらを、出演者の口を借りて短く印象的に挿入していく手法も効果的で、記録映像ではなく映画作品として優れていたと思う。