「パリ13区」
男女の微妙な仲をケレン味なく描いた、という感じでしょうか。
正直に言うと私はこれを十分よく理解したとは言えません。パリについても分からないし、13区が移民が多い低廉な再開発住宅街区らしい以上のことは知らないし、アフリカ系、台湾系、田舎出身がそれぞれどういう立ち位置にいるのかについてはさっぱりわかりません。
ただ、彼ら都会に暮らす人々の寂しさと、それを埋め合わせるような関わり方はよく伝わってきます。フランスの映画らしく性愛は普通に描かれるのに、淡い感じを纏っています。人間関係は希薄で移ろいやすく、ITデバイスがいつも間に挟まります。
主な登場人物4人のうち3人は、それなりに高学歴だけれど、社会的成功を目指す勤勉克己とは遠いところにいます。これがつまり先進諸国ミレニアル世代のゆとりある生き方なのかもしれません。
それをすんなり抵抗なく取り出して見せてくれたのが本作の良さでしょうか。くどさや誇張を感じさせない、綺麗な取り出し方だと思います。
監督のジャック・オディアールさんは今年70歳。こういう美しく瑞々しい感性の70歳もいるということに驚かされます。