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May 2022

2022.05.30

「犬王」

よいなー、湯浅正明。
ケモノヅメ
夜は短し歩けよ乙女
夜明け告げるルーのうた
きみと、波にのれたら

どれもすごく印象に残ってる。
こういう作家はあんまりいない。

本作も独特の素晴らしいイマジネーションに溢れていて大満足です。
理屈はいらないので、ただ観る。

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「攻殻機動隊 SAC-2045 シーズン2」

NETFLIX シーズン2全12話

もうほとんど惰性で見ている。パターンもかなり型にはまっていて、特に面白さもない。
不可解な事件が起きる→電脳ハックが疑われて錯綜する背後関係から犯人を割り出す→政治的な横やりが入るが荒巻と素子でなんとかする→実働部隊の派手なバトル→新犯人は広大なネットに逃げることが多い
みたいな感じ。

今回米軍がやたらと出てきて、強いやられ役を演じていたのは多少新しいか。

素子と同性能の全身義体が9課の新メンバーとして登場したのもまあ新機軸なのかもしれない。ただ、こいつにはゴーストがない。
ゴーストがないのに人間らしい感情を持っている(ように見える)のは少しご都合主義なんじゃないか。

その新メンバーと素子だけが、Nの影響を受けなかった理由というのがふるっていて、新メンバーはゴーストがないからだが、素子の方は現実と夢の落差がないから、なんだそうだ。メスゴリラの面目躍如w


最後の方はちょっと話が急に大きくなりすぎて消化不良だった。9課のメンバーが次々斃されたのはこれまでになかった危機で、これは部隊崩壊かと思ったのだが、最後は夢オチなのかどうか。曖昧でよくわからなかった。何かもうちょっと面白く展開させる可能性はあったかもしれない。

このシリーズは現実に追いつかれてしまって随分経ったけれど、なかなか新味が出ない。仕方がないんでしょうね。

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2022.05.29

「死刑にいたる病」

原作小説がある。
謎解きと、日本社会の表には出ない愚劣さと、個々人の獣性と、そういうものがもつれ合いながら進行する。首都圏の上澄みにはなさそうな嫌なものが露わになる。そういう感じの作品。
もちろんフィクションなので、現実とはズレがあるだろう。そこを物語や映像のリアリティで補っている。よくできた虚構。

しかし虚構とはいえ、世の中には遠ざけておくべきものや人はたしかにある。そういうものに運悪く遭遇した時に身を助けるのは、自分の側の冷静な論理と、そして忌むべき相手と同種の毒かもしれない。

留置所の面会室で交わされる会話を聞いていると、犯人側は少しの事実を混ぜながら多くを情緒に訴える内容なのに対して、聞き取る側は原則として事実のみで話すところに、両者の違いがくっきり表れている。

本作の主人公は、かつての獲物ではあったけれど、魔の手を跳ね返すものを内に揃え持っていたとも言えそうだ。

救いようのない悪を描いているように見えて、実は、それに対抗し得る強さが成長する過程をも描いていると見ることもできる、結構な問題作でした。

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2022.05.22

「ラブ、デス&ロボット」シリーズ3

NETFLIX シリーズ3全9話

このシリーズがNETFLIXの楽しみのひとつ。手頃な長さなのでとっつきやすく、それでいて濃い。

今回もどの話も面白かったが、中でも「巣」と「彼女の声」が良かった。

シリーズ1、2,3ともデビッド・フィンチャーが製作総指揮と監督を務めている。面白くないわけがない。彼の作品は美的センスと並んで精神性が強い。エイリアン3のときはこの精神性が賛否を分けた気もする。私はかなり好み。

たいへんだとは思うけど、可能な限り続けてほしい。

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2022.05.16

「シン・ウルトラマン」

うむ。総集編でしたね。

TVアニメなどを映画化する際に採用される手法だと思いました。話がとぎれとぎれで映画としてはいまひとつ、という感じです。これだけの内容を詰め込むのなら3時間くらいは必要なところを、2時間に納めるためにだいぶ端折っています。

そんな無理な条件下でもなんとか破綻せずまとまったのは幸いでした。説明的な早口の科白の多さは、そのしわ寄せで仕方がない。

「シン・」の定番っぽい霞が関永田町しぐさですが・・
これは2度やられるとちょっと鼻につく感じです。シン・ゴジラのときは、それをこそ描こうという意図が感じられたから価値があったのですが、本作では単なるファッションに堕してしまっています。いやな予感のとおりになってしまいました。

特撮はよかったですね。もっとも今のCG技術からすると、特段どうということもないのですが。

ウルトラマンが飛ぶときに無音なのが、まったく未知の力を感じさせて、とてもセンスがいいと思いました。姿が美しかった。

全体をあわせて、可も不可もなしといったところでしょうか。

 

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2022.05.05

「ゴールデンカムイ」

NETFLIXで。シーズン1~3 全38話

漫画の方が完結して全話無料公開ということで話題になっている。でも漫画をスマホの小さい画面で読むのはちと難しいので、アニメの方を見る。こちらも樺太編で一応の区切りまで行っている。

お話は、宝探しの冒険譚にまだ生々しい戦争の記憶を絡めつつ、サバイバル要素もふんだんに取り入れていて面白い。

加えて、キャラが立っている。特に鶴見中尉と狙撃手の尾形はこういう舞台設定ならではの尖り具合がよい。

小数民族がほぼ絶えてしまってから多様性などと言い始める自らの業の深さをちくちくと感じつつ、主人公と周囲の群像の生き方を羨望を込めて見るのが吉。

だいたい、宝探しですからね。おまえら日々の生業はどうしたとか、金はどこで調達しているとか、考えてはいけない。

連休に手頃に楽しめてよかったです。

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2022.05.04

「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」

あれだけ広告打ちまくっているからには、本作にはたくさんの人の命運が掛かってるのだろうけれど、私にはどうもいまひとつだった。

あんな強力な魔法使いの目を覚まさせられるのは当のご本人だけだったという妥当なオチではあったけど、それじゃ周りの人たちの大騒ぎは何だったの、という感じ。全員振り回されましたね。

鍵になる女の子の名前もいけすかない。ストレート過ぎてげんなりする。

やっぱりMARVELの真面目路線ものはピークアウトしたのかもしれない。あとはThorのズッコケお笑い路線に期待するしかないか。

いいところといえば・・本人どうしの対決で♪が踊っていたのはちょっとよかったかな。

朝からコーヒーとかビタミン飲料とか飲み過ぎて途中2回もトイレに行く羽目になったので、あんまり大きなことは言えないのですが。だいたいそんなところでしょか。

マルチバース、使い方が難しいですね。スパイダーバースのような使い方の方がいいんじゃないかと思います。

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2022.05.03

「パリ13区」

男女の微妙な仲をケレン味なく描いた、という感じでしょうか。
正直に言うと私はこれを十分よく理解したとは言えません。パリについても分からないし、13区が移民が多い低廉な再開発住宅街区らしい以上のことは知らないし、アフリカ系、台湾系、田舎出身がそれぞれどういう立ち位置にいるのかについてはさっぱりわかりません。

ただ、彼ら都会に暮らす人々の寂しさと、それを埋め合わせるような関わり方はよく伝わってきます。フランスの映画らしく性愛は普通に描かれるのに、淡い感じを纏っています。人間関係は希薄で移ろいやすく、ITデバイスがいつも間に挟まります。

主な登場人物4人のうち3人は、それなりに高学歴だけれど、社会的成功を目指す勤勉克己とは遠いところにいます。これがつまり先進諸国ミレニアル世代のゆとりある生き方なのかもしれません。

それをすんなり抵抗なく取り出して見せてくれたのが本作の良さでしょうか。くどさや誇張を感じさせない、綺麗な取り出し方だと思います。

監督のジャック・オディアールさんは今年70歳。こういう美しく瑞々しい感性の70歳もいるということに驚かされます。

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2022.05.02

「空挺ドラゴンズ」

NETFLIXで。シーズン1全10話。

ずっと気になっていて、まとまった時間がやっととれたので見た。とてもよい出来で、満足度が高い。

ロードムービー+料理番組風の味付け+青春群像劇で、背景世界はファンタジー。

捕鯨を下敷きにして、鯨をファンタジーの龍(と呼ばれる奇妙な生き物)に置き換えているのだけど、これがとてもうまくいっている。大海原は大空に、武骨な捕鯨船は空飛ぶ捕龍船に、雄大な鯨は天翔ける龍に。想像力を目いっぱい刺激してくれます。特に龍をステレオタイプに囚われずに海生生物風の多様な形態で描いているのが素晴らしい。

お話の展開もよく出来ていて、単に勇壮な捕龍の様子だけでなく、地上の人間社会との関わりにも触れている。その上で、人間社会に居場所がないと感じた若者たちが一つの船に乗船し「おろち(龍)獲り」というドラマティックで本源的な職業に魅せられていく。

全編を通して、食物連鎖の中で生きることへの気取らない決意、歓びと畏れとが描かれていて、力強い作品でした。

冗長さを抑制して快適なリズムで仕上げているところもよかった。

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