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2022.03.21

「ガンパウダー・ミルクシェイク」

久しぶりにつまんないと気持ちよく言い放ってよい映画に出会いました。それもただつまんないだけでなくて、面白くもつまんないのです。

このギャグのような笑えるアクションは何?w 特に、主人公の両手が薬で動かなくなってからのそれは爆笑です。この嗜虐的な状況で、対するはお馬鹿お下劣男三人組、そいつらが下卑た笑いとともに主人公の手が動かなくなるまでをカウントダウンするのです。奴らが手の効かなくなった女主人公にその後ナニをするのか、いやがうえにも期待は高まり想像は掻き立てられます。うひょひょひょひょ。

その鼻の下が伸びきった想像を、あっと言わせるアクションでぶち壊してくれるのがたまりません。こなくそやられてたまるかという女の必死の表情がまた劣情を掻き立ててくれます。至福です。

こういったシークエンスが、なぜこれほど効果的かというと、はっきりしています。主人公のエヴァを演じるカレン・ギランさんのすらりと伸びた肢体、ふくよかな腰、最高のスタイルがわれらの劣情を掻き立てるのです。それ以外に考えられません。かっこいいとかいう気取った表現はここでは不適切で、正しくセクシーと言うべきです。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのネビュラ役の人なんですねえ。次作ではもっと注目したいです。

インタビュー映像によると、この辺のお色気混じりのギャグのセンスは監督本人実物の日常のセンスらしいので、まあ本物なのかもしれません。

本作の見るべきところはそのくらいですが、もう一つだけ挙げるとすれば、敵のマフィアのボスが、虜にした主人公を前に、自分の娘たちの不可解さ、彼女たちからの疎外感を語る場面です。本当に可笑しくて涙が出ちまいます。そんな男が最初に、自分はフェミニストだと自己紹介するのですから、皮肉がばりばり効いています。これではたった一人の息子を殺された彼が復讐に全てを賭けるのは間違いなく正当です。

このおやじの話を目を逸らしながら聞いている反省と反抗の入り混じった主人公の絶妙なむくれ顔がまたよいです。じわじわ嬲り殺して責任をとらせてやるというオソロシイ内容の話なのに、父親が思春期の娘の非行を叱っているんだけどどうもいまいち反応がわからんみたいな雰囲気になっていて、そのギャップが可笑しくて腹の皮がよじれそうです。で、結局男どもは全員返り討ちになっちまうんですけどね。やっぱりおやじ赦せんという女子パワーにやられて、こんなはずじゃなかったけどどこかで本望かなって思ってる感じ。男ってほんと哀しいです。ちゅどーん。

そういうわけで、仄かな劣情をアクション映画の名のもとにひっそりと楽しみたい貴兄にはたいへんお薦めの一本です。

 

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