「ミニマリズム」
NETFLIXで。
必要なもの、不必要なものをよく吟味して、不必要なものを持たないようにしようというミニマリズムの思想の伝道者2人のドキュメンタリー。
ここでも主張の肝は、ストイックにモノを捨てるのではなく、バランスを考えながら、広告による刷り込みではなく、自分の考える人生を生きようということにありそうだ。
日本人にはかなり以前から侘び寂びの思想の系譜があるし、バブル時代が去って低成長が長く続いていることもあって、現代の我々はミニマリズム的な生き方に近いところに居る気はする。
が、残念なことに、もっと収入が欲しいという方向に向かいがちだ。いまの収入でも賢く幸せに暮らせる知恵・方法があるのではないか、という方向にはなかなか行かない。
ひとつには、コマーシャリズムの影響が大きいだろう。TVから流れてくるひっきりなしの刺激が、立ち止まって自分でものを考える能力を奪っている。インターネットも最近は同じ害を垂れ流している。こちらは広告ではなく、知り合いからの刺激だ。誰それが新しい何々を買ったという情報が、無用の物欲を掻き立てる。
もうひとつは、経済の成長神話があるかもしれない。こちらはもう少し話が込み入っている。ミニマリストが増えれば、物と金の回転速度は落ちて、GDPは今より下がるだろう。それで社会はもつのかという疑問がある。これについての答えは本作の中にはなさそうだ。そもそもいまの過熱した消費社会を維持するという前提を疑うべきだという立場なのかもしれない。
さらに、子どもがいればミニマリズムなどと言っていられないだろうという指摘がある。誰もが思い浮かべることだが、ミニマリストたちはその解答は用意していた。彼らが目指しているのは自己満足的な禁欲主義ではなく、バランスの取れた、自分で考えたうえでの消費ということなのだ。
当たり前の結論だが、こうして座ってキーボードを叩きながら周囲の部屋の中を見回してみると、当たり前などと偉そうな口は聞けないことがすぐにわかる。
10年前のアナログ停波以来、TVを見なくなったおかげで、新しいものを買いたい欲求は随分減った自覚はあるが、それ以前に買ったものの整理がまだついていない。
この機会に、少し不要なものを捨てて、そして空いた隙間を要らないもので埋めないようにしてみようか。