「355」
まあ想像どおりの作品だった。驚きはなかったけれど、作り手の感覚がはしなくも現れたところがいくつかあった。
本作の女性チーム5人の顔ぶれは、米国白人、英国黒人、ドイツ白人、スペイン白人、中国東洋人。アラブ人やインド人はいない。やはり女性の人権が弱そうな国はまだ参加資格がないらしい。
この人たちの暴れ方というのが、非常に偏っていて、欧州大陸ではとっとと殺した方が手間が省けるのになかなかそうしない一方で、モロッコ(イスラム圏)のフェーズではいともあっさり人を殺しまくる。殺しているというより果物を捥いでいる程度に感じられて、その無神経ぶりに戦慄すら覚える。インディージョーンズもこうだったかどうかよく覚えてはいないが、欧米人がイスラム圏を見る目は何十年も進歩がないようだ。
まあ、進歩がないのはひょっとするとイスラム圏の方かもしれないけれど。
チームの中で最後に登場する中国人エージェントの見せ方もまだぎこちない。能面のような化粧ひとつとってもつくりもの感があふれている。もちろん不可解な国という貌を表すために意図してやっていることなのだろうけれど。
それに比べて、勝手知ったる欧米世界の描き方の方はよくできている。ダイアン・クルーガーの壊し屋っぷりとか、思わず微笑んでしまいます。何かあるとすぐ、よし、壊そうぜ、と前のめりになって仲間に止められるのがお笑い芸人のお約束みたいです。男の役柄でこのタイプは少しイカレタ奴という扱いが標準だけれど、女でこれだと、まあそういう風にキレると手がつけれらないことってあるかもなと言ったら女性蔑視なんでしょうかそうですか。
そういう笑えるところを見にいくぶんにはいいんじゃないでしょうか。中身は普通のスパイ映画だから、面白さはまあそれなりですし。