「大怪獣のあとしまつ」
大阪ゲーニン風の下品でつまらないギャグを散りばめながら、実はあの震災による原発事故を斜に構えつつ振り返る真面目な映画。ほんとか。
まあ少なくとも、怪獣とは全く関係ありません。
当事者は実際のところ、大変だったろうなと思うわけです。日頃は社会の上澄みで生きているような人たちが、あんな汚れ仕事に全面的に向き合わなければならなくなったわけですから、そりゃ混乱するだろうし、お笑いで胡麻化したり茶化したりもしたくなるでしょう。しかも、誰がやってもそんなに上手くはいかないような、未経験のことばかりなのですから。
そこはしかし、曲がりなりにも優秀な人たちの集まりだけあって、効果のありそうな対策をいくつも繰り出すわけですが、ことごとく予期せぬファクターのせいで水泡に帰します。辛いですよね。でもものごとってそんなものです。
実際、地中に氷の壁をつくるとかフランスから排水の処理機械をもってくるとか遠隔操作の作業ロボットを泥縄式でつくるとか、失敗も成功もあった末に、いまでも膨れ上がる処理水をどうするかですったもんだしているわけですから。ガス圧で爆発するとか、凍らせる話とかはわかりやすいメタファーでしたね。
映画としての結末は、未知の救世主が表れて汚れものを大気圏外に運び上げ星になって事案は解決されてめでたしめでたしですが、仄かな恋心も報われずに終わります。ご武運をとかいうのは苦し紛れのゲーニン根性の最後っ屁ともいうべき悪い冗談です。
まあ、特撮の歴史へのリスペクトもあって、諸星弾とアンヌのシーンへのオマージュなんかちょっとよかったです。
暇なら見てもいいかな、くらいでしょうか。
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