「ナイト・オン・ザ・プラネット」
ジャームッシュの1991年の作品。欧米の5つの都市を舞台に、タクシーと客とのやりとりの中に、それぞれの都市の雰囲気を、風刺のスタイルで描くオムニバス。
古いといえばそうだろうけれど、今と変わらない地域性・国民性のようなものが滲んでいてにんまりする。実際にそうなのかどうかは知らないし、あくまでジャームッシュの見立てということではあるのだが。
ロサンゼルスでは、世間一般の常識と関わりなく、自分で決めた自分の道を迷いなく行く自我の強さ。
ニューヨークでは、見知らぬ者どうしでも、一芸のある人、困っている人には助力を惜しまないフランクな気質と、その裏にある闇の濃さ。
パリでは、社会的弱者の魂や感性の意外な強さと、恵まれているがゆえに緩さがある健常者の意外な弱さ。
ローマでは、壊滅的な倫理の軽さと、形式的な贖罪のための便利な道具でしかない神やカソリック教会の矮小化。
ヘルシンキでは、個の確立とは遠い、情にほだされやすい社会の湿り気。
当たっているかどうか難しいところだが、まあおおよそはそんなものが並んでいる。
パリのエピソードが知的で面白かった。ローマはひたすら煩い。ヘルシンキは、ちょっとほかの4都市とは違う感じがした。風刺ではなくいたって真面目。アメリカの2都市は、だいたいこんなもんでしょうか。
よほど暇だったら見てもいいかも。
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