「クライ・マッチョ」
https://wwws.warnerbros.co.jp/crymacho-movie/
歳をとってからのイーストウッド監督の作品は、淡々とした展開が多いように思う。本作もその例に漏れず、多少の見せ場はあるが緊迫感はさほどなく、飄々とした老人の雰囲気に皆毒気を抜かれたような趣だ。一応は配置されている敵役も鶏なんぞにやられっぱなしで弱っちい。あるいはそこが、つまりマッチョなんて意味ないねというその点が、この作品の眼目であるかのようだ。
では代わりに何があるのか。長い年月で身につけた様々なスキル、この主人公の場合は、カウボーイという職業柄身に付いた動物たちの扱い方と、DIY的な身の処し方だろうか。そういうなんでもないような、けれども人々の役に立つし、そのことで生きている喜びを感じ取れるようなものにこそ価値を置く生き方、考え方が、本作の味わいだろう。南部という土地柄を背景に、そうしたものがよく映える。
もちろん、平易な言葉の裏にある賢さや悟りと、それでも譲れない一線も、いつもながらの老イーストウッドの見どころだ。
ということで、老いらくの恋なんかも交えて、小さな子供たちに囲まれた老境の桃源郷を見せるような風情の作品でした。