「マクベス」
Apple+の作品のようだけど、映画館の先行上映で見た。
話には特に奇をてらったところはなく、昔からの筋書きどおりの展開。だが映像は特異だ。
グレースケールのきめ細かい色調と、単純かつ象徴的に描かれる舞台空間とが、人物達の表情と内面を際立たせる。極めて演劇的だ。
淡々と描き綴る中に、野心も激情も義憤も愛も全てをフィルターでろ過して見せる。結果、おどろおどろしい悲劇のはずが、澄んだ水面に映しだされる遠い世界のおとぎ話のように変質している。
その透明感のある映像を通して、作り手は、人の魔性や狂気よりも、むしろ弱さを際立たせているように見える。原作はどうだっただろうか。
古典のフレームを借りつつ、作り手の感性を全面的に写し込んだとも見える、変わった作品。