「マザー/アンドロイド」
やや地味で昏い感じの作品。ストーリーではなく、印象的な瞬間を見るのがいいでしょうか。
妊娠9か月でもういつ生まれてもおかしくない女とその伴侶が、危険を避けて森の中を旅する話ですが、至福感はなく、むしろ女性の負担の大きさがクローズアップされているあたり、現代のリアルを描こうとしているようなところがあります。
反乱を起こしたアンドロイドが人間を捕虜にしている建物内を歩き回っているシーンは、薄暗い中の人影の目だけが青くぼんやり光っている様子が不気味。
最後の方で明らかになる、アンドロイドに搭載されたAIの知恵の回り方にぞっとします。人間の心理すら読み込んだ迂遠で戦略的な思考をAIができるのかどうか、考え込んでしまいます。そういえば、AlphaGoの快挙の後、AI研究に世の中が注目する中、高名な科学者たちはAI研究を規制すべきと言っていたのでした。彼らはその後なぜ口をつぐんだのか。先日観た「Don't look up」をまざまざと思い出します。
結末は悲痛というほかありません。もう少し救いがあってもよかったですが、まあそこは作り手は譲らないのでしょう。安全なアジアの国として中国・韓国が上がっていて日本はそこに入っていないのが残念ですが、北米の中での存在感はいまやそんなところなのかもしれません。
その他は、お腹の大きいクロエ、赤ん坊を抱くクロエ、みんな死んだ後も生き延びているブルーなクロエなどが見どころなので、クロエ・グレース・モレッツが好きな人は一応チェックしておいてもいいかな、くらいでしょうか。
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