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January 2022

2022.01.31

「地球外少年少女」

NETFLIX シーズン1 全6話

これまた芸が細かい、目線が細部までよく行き届いた作品。ガジェットも満載でおたく心をくすぐります。SFというのは、科学っぽい説明で上手に読み手を騙してくれるのが良い作品だと思いますが、本作はそのひとつに挙げられるでしょう。

ご多聞に漏れずここでも人工知能が主要テーマですが、人工知能の思考のフレームが与えられる知識によって規定(制約)されるという本筋をきちんと押さえていて骨太です。失うものの多い大人達が人工知能を恐れて与える知識を制限する一方で、未来しかない少年少女たちが無制限に知識を与えてその知能を極限まで高めて危機を脱しようとするのが対照的に描かれていて、感慨深いものがあります。ほんと、我々はどこへ行くのでしょうね。

そういう太いフレームの上に、ガジェットやら陰謀やら評判経済の申し子やらがシリアスにコミカルに絡まりついて、骨も肉も美味しく仕上がっています。

このバランスの良さとか、人工知能というものへの正しい理解などは、世代の違いなのでしょうか。知能の映像表現にしても、ロボットアニメ時代の作り手が脂汗をかきながら生み出した笑ってしまうような漫画的な映像とは、明らかに一線を画したセンスを感じさせます。

割とお勧めの一本。

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2022.01.30

「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」

作中の編集長が「意図がよく伝わるように書け」と何度も言っているのにこのわかりにくさは何ですか。というのが2つ目の獄中芸術家の長いエピソードが終わるあたりまでを見た感想です。

でも3つ目のエピソードあたりから作品の意図がわかってくると、おお、ああ、なるほどとなるのが醍醐味。欧米映画の教養がないと十分には楽しめなさそうな作品で、残念ながら私には表面的なことしかわかりませんでしたが。

それでも、文化芸術や政治社会をためつすがめつ見続けている編集者の人間味と思慮深さを兼ね備えた視線は感じました。力を持ち始めた大衆とその先頭に立っていた雑誌メディアの幸せな時代の再現とでも言ったらいいのでしょうか。雑誌という媒体のコラージュのような感触を、映画という媒体で作り直すとまさにこんな風になるのか、という感じです。

ウエス・アンダーソンの様式美あふれる独特の作風の中で、そういうものが陳列されて、そこはかとない懐かしさを誘います。そしてこれが懐かしいと思えてしまうほど、今のネット世紀変わり様が逆に意識されてしまうようなといったら少し穿ち過ぎでしょうか。

いや、やはりここは素直に幕の内弁当のような良さを楽しむべきでしょう。パンデミックの影響で長らくご無沙汰していた俳優さんたちの顔もそちこちに見えるのがうれしい。シアーシャ・ローナンの青い瞳を見るのは本当に久しぶりです。そのほかにも本来ならどこぞで主役を張っているはずの俳優たちが、この監督の解像度の高いフレームとディテールの中にすっぽりとはまってそれぞれの味を出しているのが素晴らしい。

なんだかとても贅沢で香り高いものを垣間見たような、そんな気分にしてくれる作品でした。

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2022.01.24

「クライ・マッチョ」

https://wwws.warnerbros.co.jp/crymacho-movie/

歳をとってからのイーストウッド監督の作品は、淡々とした展開が多いように思う。本作もその例に漏れず、多少の見せ場はあるが緊迫感はさほどなく、飄々とした老人の雰囲気に皆毒気を抜かれたような趣だ。一応は配置されている敵役も鶏なんぞにやられっぱなしで弱っちい。あるいはそこが、つまりマッチョなんて意味ないねというその点が、この作品の眼目であるかのようだ。

では代わりに何があるのか。長い年月で身につけた様々なスキル、この主人公の場合は、カウボーイという職業柄身に付いた動物たちの扱い方と、DIY的な身の処し方だろうか。そういうなんでもないような、けれども人々の役に立つし、そのことで生きている喜びを感じ取れるようなものにこそ価値を置く生き方、考え方が、本作の味わいだろう。南部という土地柄を背景に、そうしたものがよく映える。

もちろん、平易な言葉の裏にある賢さや悟りと、それでも譲れない一線も、いつもながらの老イーストウッドの見どころだ。

ということで、老いらくの恋なんかも交えて、小さな子供たちに囲まれた老境の桃源郷を見せるような風情の作品でした。

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2022.01.10

「マザー/アンドロイド」

やや地味で昏い感じの作品。ストーリーではなく、印象的な瞬間を見るのがいいでしょうか。

妊娠9か月でもういつ生まれてもおかしくない女とその伴侶が、危険を避けて森の中を旅する話ですが、至福感はなく、むしろ女性の負担の大きさがクローズアップされているあたり、現代のリアルを描こうとしているようなところがあります。

反乱を起こしたアンドロイドが人間を捕虜にしている建物内を歩き回っているシーンは、薄暗い中の人影の目だけが青くぼんやり光っている様子が不気味。

最後の方で明らかになる、アンドロイドに搭載されたAIの知恵の回り方にぞっとします。人間の心理すら読み込んだ迂遠で戦略的な思考をAIができるのかどうか、考え込んでしまいます。そういえば、AlphaGoの快挙の後、AI研究に世の中が注目する中、高名な科学者たちはAI研究を規制すべきと言っていたのでした。彼らはその後なぜ口をつぐんだのか。先日観た「Don't look up」をまざまざと思い出します。

結末は悲痛というほかありません。もう少し救いがあってもよかったですが、まあそこは作り手は譲らないのでしょう。安全なアジアの国として中国・韓国が上がっていて日本はそこに入っていないのが残念ですが、北米の中での存在感はいまやそんなところなのかもしれません。

その他は、お腹の大きいクロエ、赤ん坊を抱くクロエ、みんな死んだ後も生き延びているブルーなクロエなどが見どころなので、クロエ・グレース・モレッツが好きな人は一応チェックしておいてもいいかな、くらいでしょうか。

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2022.01.09

「マクベス」

Apple+の作品のようだけど、映画館の先行上映で見た。
話には特に奇をてらったところはなく、昔からの筋書きどおりの展開。だが映像は特異だ。

グレースケールのきめ細かい色調と、単純かつ象徴的に描かれる舞台空間とが、人物達の表情と内面を際立たせる。極めて演劇的だ。
淡々と描き綴る中に、野心も激情も義憤も愛も全てをフィルターでろ過して見せる。結果、おどろおどろしい悲劇のはずが、澄んだ水面に映しだされる遠い世界のおとぎ話のように変質している。

その透明感のある映像を通して、作り手は、人の魔性や狂気よりも、むしろ弱さを際立たせているように見える。原作はどうだっただろうか。

古典のフレームを借りつつ、作り手の感性を全面的に写し込んだとも見える、変わった作品。

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「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」

これはまた内省的な。。。

まあでもこれでオールリセットで再び軽快なスパイダーマンの活躍を見られると思えばいいでしょうかね。

これまでの敵役との関係を精算して、本命のヴェノムや、分岐ストーリーのドクターストレンジに繋がっていくのならOKです。

スパイダーマンのコスチュームがアイアンマンみたいなスーパーテクノロジーの塊になって、中身がスパイダーマンである意味が薄れていたのが嫌だったので、実はほっとしてもいます。

ということで、悪くないんじゃないでしょうか。

ひとつ不満というか違和感があるとすれば、世界に対するアメリカ人の能天気な俺様思考がちょっと鼻についたくらいでしょうか。とはいえそのおかげで物質文明が進歩してきたのは間違いないことなので、イッツコンプリケイティッドではありますが。

そうそう、ドクター・オクトパスが同じユニバースのスパイダーマンに向かって、字幕で「成長したな」と出るところは、「老けたな」というのが正しい翻訳だろうと思ったことはここに特記しておきたいところです。w

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