「アナザーラウンド」
売り文句だけ聞くと、ただの酒飲みのバカ騒ぎかと思うけど、見てみると全然違っていて、よい味わいの映画でした。
酒は百薬の長という言葉のとおり、適度のアルコールは人の気持ちを開放して、しらふのとき、様々な慣習や自制に囚われているときにはできない行動を取らせます。それが良いこともあれば悪いこともあるという話。
言葉だけでそんなことを言っても、まあそうだね、で終わるのですが、そこを具体的に見せて味わいを出すのが映画というもの。これだから映画を見るのはなかなかやめられません。
この作品は特に歌を効果的に使っています。デンマークの国歌をはじめ何曲か入っていますが、どれも曲・詩・声ともに美しく響いて、作品に品格をもたらしています。
マッツ・ミケルセンは普段は寡黙な渋い役が多いですが、本作では最後に楽し気に踊るシーンをたっぷり見せてくれます。悲しいことや辛いことがいろいろあった後でのこのシーン、感慨深いものがあります。
原題は"DRUK"で、オランダ語で「不完全な」くらいの意味だそう。腑に落ちました。