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August 2021

2021.08.29

「ウォークラフト」

NETFLIX

先日見たウィッチャーのアニメ版と違って、こちらは話の組み立てがよくできていて楽しめた。本来は対立している人間同盟とオークとが、実はそれぞれに、リーダーの中に悪魔の緑の魔法に魅入られた者がいて、敵対の構図が組み替えられつつ決戦にもつれ込み・・というわかりやすい構成。最後には、悪の魔法に対抗する人々が勝つかに思われたその瞬間に、自分をかろうじて取り戻した人間側の魔法使いが力尽きて、予想もつかない悲劇へと転回していく。その運びが実によい。

ゲームが原作といっても侮れません。楽しみました。

ただ、欲を言うと、クライマックスの盛り上がりの中で、アクションシーンがところどころカットされていたのが残念。時間の制約がないはずのネット配信では考えにくいことだけれど、ひょっとすると過去のTV放映の版をそのままネットに乗せたのだろうか。
ちゃんとした版で見たかった。

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2021.08.28

「ウィッチャー 狼の悪夢」

NETFLIX

実写版のドラマの方は、1が終わって2の予告が流れている段階。このアニメ版は1時間半弱で、実写版とは一応、ゲラルドの師匠ヴェセミルの若い時の話という繋がりはあるようだ。ゲラルドは一匹狼のイメージだが、本作のウィッチャーは徒党を組んでおり、人間、魔女、エルフなどと対立したりしている。

お話は、怪物退治が職業のウィッチャーの驚くべき真実と後ろ暗い影を背景に、魔女とウィッチャーのチームワークや対立、人間とウィッチャーの集団どうしのぶつかりあい、などが描かれる。加えて、ヴェセミルがまだ人間だった時の想い人との再会など、長命なウィッチャーと普通の人間との時を超えた恋という要素もあって、面白くなる要素がこれでもかと詰め込まれている。

にも関わらず、何か平坦でつまらない。見せ場はそれぞれに設けられており、面白くなるはずなのだが盛り上がらない。

たぶん、これは間の取り方に問題がある。お話の展開に間や溜めが無い感じがするのだ。この尺に納めるには少し要素が多すぎるのだろうか。世界観が頭に入っていれば、楽しめたかもしれないとも思えるので、見る人を選ぶのかもしれない。

面白い要素が揃っても、それを面白い作品に仕立てるというのは、難しいものだなという感じでした。

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2021.08.22

「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」

ジェームズ・ガンってアメコミ原作の映画の脚本や監督ばかりやっている人だけど、映画作るのうまいじゃんね。という感じ。同じアメコミ映画の監督でもJ・J・エイブラムズ辺りの下手っぷりと比べるとかなり違う。
ロマコメとかやったらやっぱりうまいんじゃないか。

んで本作は、冒頭意味ありげに紹介された主人公チームと思しきやつらがのっけからアレな目にあったりして、掴みがうまい。

ほいで、あとはベトナム反戦映画みたいなノリで話をつくる。ここで面白いのは、ハーレイ・クインが反アメリカのアイドルみたいに祭り上げられるところで、本人が「ん-とそれはちょっと違うんだけど」みたいな反応を見せるところ。微妙な仕草だけでそういうのをあやまたずに表現する役者はやっぱりすごいです。

そのクインが子ども殺しの話にいきなりキレて手を組んだばかりの相手をアレしてしまうあたりに、このキャラの思い切りの良さというか、出たとこ勝負の無敵ぶりが表れてたりする。

ここの親米反米的な構図が、微妙にずれて後半の争いのテーマになったりもしていて、お話つくるの上手いなと思うわけです。それだけなら普通だけど、こうしていろいろな要素をずらしながら関連付けたり、時間差を置いて見せたりするだけで味わいというものが出るわけです。

そして最後は、大怪獣登場で舞台はもうはちゃめちゃに。ビッグクリーチャデッキよりウィニーデッキの方が基本的に強いてことをしっかり証明してくれます。大衆の心理もばっちり読んでますね。

小が大を倒すのは、この映画の隠れたテーマで、勝負を決する何か所かで見られます。そういうセンスなんでしょうか。

あれよあれよという間にお話しが進んで、退屈せずに見られました。

次は便所マスクとイタチが敵役ですかねえ。あんまりうまくいかない気もしますが。

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2021.08.13

「フリー・ガイ」

フリー・ガイって「ただの人」の意味なのね。自由な人ではありません。でも作中では自由の意味にも引っ掛けているみたい。さらには舞台となっている仮想世界も何でもありのフリー・ワールド。フリーづくしです。

コロナで映画館が閉まっている間さんざん見せられた予告では、またぞろ仮想世界のお話で代わり映えしないなと思ったけれど、いざ実物を見てみると意外や意外。時代背景を映した重層的かつ軽快なエンタテイメントに仕上がっています。

登場人物がはじめからAIということでもなく、徐々にその正体が明かされていく展開も面白いし、一度再起動された後、お姫様のキスで再覚醒するところの描写などはたいへん実感がわきます。ああいう感じですよね実際。

配役がライアン・レイノルズですから、笑いの種もたくさん仕込まれています。特に最後の橋を渡るところで登場するマッチョキャラとのアクションでは、アメリカ人、そして多くの日本人も間違いなく反応するだろう仕込みもあって、爆笑できます。こういう屈託のない遊びがよいですね。

そうして締めくくりは真実の恋に気付くニクい展開で、エンタテイメント幕の内弁当のようです。

辛気臭い盆休みの湿った空気を吹き飛ばす面白い娯楽を求めている向きにはたいへんお勧めの一本でした。

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2021.08.12

「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」

NETFLIXで。

このセピアっぽい色合いの画像にまず惹かれたので観てみた。
中身はよくありがちな、ロードムービーの一種で、負け組の魂の救済の物語だ。わるくない。

俳優が見事にはまっていると思う。ダウン症患者役の人はもちろんだが、旅の途中で一行に加わる女性役が、ダコタ・ジョンソン。多少しもぶくれ気味で、人の警戒心を解かせるような緩いおかめ顔が、この話にどんぴしゃりはまる。

仕事もなく自信もなくむしゃくしゃのはらいせにやった放火がもとで追われる身になった男の役は、シャイア・ラブーフ。この人は実生活に問題があって、そのせいかどうかスターになるチャンスを逃してきたわけだけど、演技はうまい。身体障碍者を演じる短い作品で息を呑んだことがある。すごくうまい。その彼が、この負けて逃げ続けながらも、現状を受け入れずに夢を見る役をやっている。

そういう面々が織りなす貧乏素寒貧な旅だが、イリノイ川の大きな自然のなかでは、ちっとも不幸に見えないのが素晴らしい。これは、いわゆる勝ち組へのアンチテーゼなのだ。狭苦しい人間社会であくせく勝ち負けを気にしながら生きなくても、もっと別の生き方があるだろう、という。実に平凡極まりない作品だが、手を変え品を変え作り続けれらるのには、それが常に必要とされているという事情があるだろう。

途中、宗教がかったじいさんに助けられたこともあって、このロードムービーには、巡礼の旅のような色合いも多少ある。そのおかげで、安っぽさを免れているところもある。

タイトルは、プロレスラー志望のダウン症の男が自身に名付けたリングネームだが、田舎のプロレス興行で初めて短躯から捻りだす怪力を見せつけ人々の驚嘆を引き出すシーンは、本作の白眉であり祈りの具現化だ。そこが彼らの旅のひとつの節目となって、次へと向かうところで作品は終わる。

この先、ストレスだらけの現世をかいくぐって向かうフロリダに、果たして彼らの次なる夢はあるのだろうか。


いやー。なんか当たり前すぎる感想だけど、作品がそうなんだからしょうがない。でも良作です。

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2021.08.09

「ラブ&モンスターズ」

NETFLIXで。

若者は旅をせよ。それも命を的の冒険を。という趣旨の作品。男の子を旅に駆り立てる原動力はもちろんラブ。よいなー。正直です。
んで、実践的な知識スキルを身に着けるには、「直感は失敗を重ねることで身につく。最初の何度かの失敗を乗り越えれば、あとはうまくいく。」てな主義がおいしい。乗り越えられなかったら? 知りません、という飄々とした割り切りがよいです。

シェルターを出て危険だらけの地上を旅する中で、仲間もできて、別れもあって、目的地に着けばついたで身に着けたありったけを絞り出して立ち向かうイベントが待っていてと、話の流れにもスキがないです。

一言でいうと、完成度が高い。
一見、ぽわんとして緩い感じなのですが、ディテールに無駄がないのです。

ちょっとユーモラスですらあるモンスターたちも、独特な存在感で楽しませてくれます。アクが強すぎるとゲテモノになりがちなジャンルなのに、この親しみやすさは特筆もの。

観た後の満足感がわりと高い作品でした。

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「パシフィック・リム: 暗黒の大陸 」

NETFLIXでシーズン1を見る。

面白過ぎる。

ギレルモ・デル・トロの映画パシフィック・リムは、単純な西部劇みたいな印象だった。もちろん見せ場をつくるためのストーリー展開はしっかりあったけれど、それはどちらかというと添え物で、むしろカイジューとイェーガーとの手に汗握る重量級肉弾戦の迫力に重心が置かれていた。それはそれでよかった。

対して本作は、ストーリーの方に主眼が置かれている。1シーズン全7話の長さに対応すれば自然にそうなるのだが、このストーリーが実にオーソドックスでよい。伏線の張り方とその回収もわざとらしさが無く、このあとのシーズン追加を見据えて戦略的に組み立てられている。

イェーガーの操縦者が2人なのは、人の脳への負担を低減するためという解説がもともとあるが、本作では2人のパイロットが互いの過去を知り理解を深めるという重要な意味が付加されている。普通の映画なら、事件や対話を経て時間をかけて成される過程が、この映画ではブレインハンドシェイクに置き換えられ、いかにも現代的な感覚を醸している。

目新しい要素として、「カイジューイェーガー」や、「ボーイ」や「シスター」なども加わり、謎が謎を呼ぶところでシーズン1は一応の区切りとなっている。新シーズンの制作も決定しているそうだから、これは期待大です。早く続きが見たい。

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2021.08.02

「白蛇:縁起」

白蛇伝というのが、中国の民話では有名だそうで、様々な時代設定とバリエーションがあるそうだ。いずれも、人間の青年が美しい女に化けた蛇の妖怪にとりこまれそうになり、法力を持った僧に取り押さえられるというプロットのようだ。日本では道成寺を舞台にした話として子供の頃聞いた覚えがある。

さて本作は、その白蛇伝を元にしながらも、蛇の妖怪を善玉に置き換えて、人間と妖怪の悲恋に仕立てている。また、白蛇伝そのものではなく、その前世の物語としていて、なんと本編はこの作品の続編として2021年に中国で公開予定だそうだ。ぜひ日本にも持って来てほしい。

物語としては、主人公カップルの他にもさまざまなキャラクタが登場して、アクション、ロマンス、友情、姉妹愛、村人たちとの葛藤、悪辣な権力者たちとの闘いなどなどなど、面白さてんこ盛りに仕立てている。よいですなー。

絵や色使いや音曲も中国らしい感じがして日本のものとは一味違うところもよいです。

なにより、輪廻転生の思想を取り入れて、悲恋が悲恋で終わらずに次の生まれ変わりへと物語が続いていくので、救いがある。もちろん、悪役も、それから第三者的な立ち位置の化け狐(これは正邪いずれとも取引する武器商人みたいな位置づけか)も、その大きな流れに乗っていて、悠久の時の中で闘いは繰り返されるわけだが、いかにも中国らしいスケール感があってよい。解脱せずにいつまでも楽しませてくれれば、見る側としては文句ありません。

次も期待したいです。

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2021.08.01

「返校 言葉が消えた日」

B級テイストのホラーエンタテイメントでありながら、同時に、負の時代の影を織り込んで、最後にぐっと胸に迫る結末と後日譚へもっていく傑作。またいい映画を見てしまいました。

2019年の作品というから、台湾の総統選があった2020年1月に先立つ公開だったことになる。結果に少なからぬ影響を与えたともいわれることからも、強いメッセージ性を帯びた作品であることは言うまでもない。にもかかわらず原作はゲームだというから、まことに現代的な素性も持ち合わせている。風化しがちな記憶を新しい器に盛って見せたのが大ヒットの理由だろうか。

日本人にとって、太平洋戦争の暗い時代は遠い過去になりつつあるけれど、台湾の人たちにとっては、その後に続いた独裁時代は、まだそう遠くはなっていない。それに加えて、近年の大陸との摩擦のエスカレートは、ひとつ間違えば暗い時代の再来を招きかねないとの恐怖と緊張をもたらしている。

ちょうど、日本人が昭和末期からあの戦争を振り返るような、罪の意識を抱えながら明日をより良いものにしようとひたむきに足掻いていた時代を思い起こさせる。高度成長期に育った年寄りが胸に迫るものを感じるのもむべなるかな。
米国の傘の下にいた日本と違って、いまのところ自力で立つことが求められている台湾には、より強い決意が必要になっているだろう。

エンドロールの最後に出る
 平凡で
 自由に
という字幕が泣けます。

ただ、少し残念なことに、劇場を見回すと観客には白髪が目立つ。もっと若い人たちにもこうした作品の価値が広まるといいのだが。

ところで、主役を演じたワン・ジンさん、表情の作り方が上手いので、さぞ有名な女優さんなのだろうと思ったら、なんと14歳で小説家としてデビューしたのだとか。

世の中には才能に溢れた人っているものなんですねえ。ため息が出ます。

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