「竜とそばかすの姫」
仮想世界のいいところは、物理的な制約を離れて想像力を炸裂させられるところだけど、本作はそれをのびのびとやって見せてくれた。絵も歌も最高に気持ちがいい。
ネットは広大だという決まり文句があるけれど、それを動画で見せつけられる作品なんて、そうそうない。本作はそれをやってのけている。
アニメーションと映像技術は年々すごくなっていくけれど、これはその先端を行っている。なんという質感。なんという繊細さ。びっくりです。
というのが前半。もうこれだけで十分な気もする。
後半は一転して、リアルや生身の意味と価値を追求して、ネットでは及ばない感動を見せてくれる。その、人の感情を揺さぶる実名の真実を、リアルの限界の中ではなく、ネット空間で実現しているところがちょっと今風。
リアルのリアル部分は、本当を言うと少し理想的すぎる気もする。DVおやじが路上で振り上げたこぶしを収めるかというと、何とも言えない。こどもを殴りつけたところでご近所が警察に通報して逮捕、というのが例えば米国などでは常識だろうか。日本だと、みんな見て見ぬふりもあり得る。児童相談所の慎重過ぎる姿勢はよくニュースになるところだし。
まあ、そういうところは少し目をつぶって、BELLEの響き渡る歌声と、それに合わせて躍動する映像をたっぷり鑑賞しましょう。それだけでも十分アートです。細田守監督の観察眼とか画力とか構成力とか、その才能を全部堪能しましょう。