「ブラックバード」
いわゆる終活映画は、正直なところあまり見ないようにしている。どうも辛気臭いのが嫌なのだ。でもこの映画は、とても優雅に上品に、かつ味わい深くまとめていて、見て後悔はなかった。
といっても前半は、あまりに美しい思い出作りになっていて、これは感動を売りつけられたかと思った。そんなに綺麗ごとで済ませてしまっていいのだろうかと、頭の隅で半鐘が鳴っているにも関わらず、運びが巧みなので否応なく感動してしまう。
ところが後半は、意外な事実が明らかになるどんでん返しがある。やっぱり、そんなに綺麗なだけの話ではすまないだろうと、見ている方は思う。これは修羅場に突入かと思ったところが、当の本人はそれもお見通しで、子どもたちの怒りや抗議を穏やかに包み込んで話を収める。親はいくつになっても親。子は大人と言っても親の前ではやはり子だ。
こうして、はじめの決意のとおりに、主人公はこの世に別れを告げることになる。
これは終活を扱っている映画だが、むしろ、久しぶりに集まった3世代にわたる家族の、豊かなコミュニケーションを見せるのが趣旨ではないかとさえ思った。それほどに、厚みがあり変化に富んでいて、羨ましいほどの気遣いと交流がある。散歩のシーンがとりわけいい。
洗練された交わりというもののお手本のような作品でした。