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June 2021

2021.06.27

「ザ・シークレット: 希望を信じて」

2020年の作品だそう。NETFLIXでこういうのを手軽に見れるとは、たいへんよい世の中になった。

邦題はどうもぴんとこないので原題を調べると、"The Secret: Dare to Dream". dareは、実行する勇気を持つ、くらいの意味のようで、本作の中身にしっくりくる。激しくはないけれど、じんわりと勇気づけられ癒される。

お話は、夫を亡くして生活が徐々に困窮してきている母子家庭に焦点をあてている。子供たちも貧乏暮らしにめげていて、何か起きるたびに、悲観的な捉え方をするようになってしまっている。

そこにある男が現れ、引き寄せの法則というものを、子どもたちと母親に少しづつ教えていく。望むことを思い浮かべて、真剣に想うことで、本当にそれが実現していくということを、自ら汗をかきながら、実践的に示していくのだ。単に望むだけではオカルトになるところだが、実現するための具体的な方法を、小さいところ、可能なところから積み上げていくのが、たいへん好ましい。

それが、苦境にある家族に光をもたらし、マインドセットを変えていく。話の盛り上げにいろいろな障害はあるのだが、基本線は、悲観が楽観に、消極が積極に変わっていく様子をじっくり描いている。

小さな行いの積み重ねが人を変えていくということは確かにあるから、割と納得感のあるよいお話でした。子供たちが光のある方向へ素直に反応していく感じがとてもよいです。

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2021.06.20

「モータルコンバット」

うむ。真田広之がんばってるな。
地獄に落ちても炎に焼かれながら研鑽を積み、その炎を自分の技にしてからこの世に復活して復讐を果たしてしまうところなんかは、勤勉克己の日本人像にジャストフィットしてます。

それにひきかえ浅野忠信の方はちょっと楽してないか。というか目が光ってる上に顔の縦横比が1だったから最後にスタッフロール見るまで気づかなかった。まあでもおいしい役どころでしたね。

ストーリーは無し。お色気もなし。バトルだけあり。題名で検索してみると、これの元になっているゲームは残虐シーンが理由で日本未発売なんだとか。たしかに魔界の美女を頭から真っ二つに切り裂いて「完全勝利!」とか宣言するシーンなんかは、わかる人にはわかるんだろうな。私は知りませんが。

頭からっぽにしてしばしひたるにはいい映画なのではないでしょうか。

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「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」

この作品は、前作にも増して質が高い。
映像の作り方然り。緊張の作り方然り。ドラマの作り方然り。言うことありません。堪能しました。

音をたててはいけないという設定が異様な緊張をもたらしているのは前作同様です。しかしこの緊張感は、単に設定の効果によるだけではなく、シークエンスの作り方の巧みさの力でもあることに、今回遅ればせながら気づかされました。

冒頭で描かれるDAY1の様子の中で、草野球の試合の最中に異変が発生し、家族連れが自分の車へ不安を抱えて急ぐ途中、もう少しで車のドアにたどり着く直前に、他の急発進する車に危うく衝突されそうになるところ。ここの、異変に気を取られて周りが見えなくなっている心理状態と人々の慌てぶりを、カメラの回りこみ具合ひとつで表しています。映画館の席から飛び上がり掛けました。もちろん、主人公家族の夫と妻のちょっとした別行動で、異なるシーンを見せながら、恐怖と不安を時間差を持たせながら平行して走らせている効果もあるでしょう。

かくして、平穏な日常から突然の終末へと観客は瞬時に移動します。そこに何の不自然さもありません。本当にそれが目の前で起きているかのよう。すごいです。そして、それにかぶせるように怪物の出現。否が応でもこのグロテスクな災厄の現実感が高まります。

こういうところに、作り手の熱の入れようと、質の高さを感じずにはおれません。他の映画でもこうしたシーンはたくさん出てくるのですが、この作品のここの一連のシークエンスは出色の出来に見えます。

一方、ドラマの方も簡潔で的を射たつくりで、挽回不可能に思える事態に遭遇した際の人の在り様を描きます。主人公家族の友人だった男の、恐怖と無力感からくる思考停止と責任放棄の姿勢を、小さな体に不屈の精神を宿した女の子が変えていきます。母と父から受け継いだその魂が、弱き人間へ伝播して影響を及ぼしていきます。彼女が耳が聞こえないことが、あるいは恐怖心を和らげていたのかもしれません。何かを偶々持ち合わせなかった人には、別の何かが備わるのでしょうか。

本作で、反撃の方法は確立され、消えそうだった炎が多くの人々に伝えられました。これでシリーズは終わりでもいいのですが、彼女の不屈さをもう一度見たい気もします。例の「何か」がどのように地上に現れたか、その発端が本作で垣間見えたので、あれの除去あたりをネタに完結編を作ってほしいものです。期待したい。

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2021.06.14

「ブラックバード」

いわゆる終活映画は、正直なところあまり見ないようにしている。どうも辛気臭いのが嫌なのだ。でもこの映画は、とても優雅に上品に、かつ味わい深くまとめていて、見て後悔はなかった。

といっても前半は、あまりに美しい思い出作りになっていて、これは感動を売りつけられたかと思った。そんなに綺麗ごとで済ませてしまっていいのだろうかと、頭の隅で半鐘が鳴っているにも関わらず、運びが巧みなので否応なく感動してしまう。

ところが後半は、意外な事実が明らかになるどんでん返しがある。やっぱり、そんなに綺麗なだけの話ではすまないだろうと、見ている方は思う。これは修羅場に突入かと思ったところが、当の本人はそれもお見通しで、子どもたちの怒りや抗議を穏やかに包み込んで話を収める。親はいくつになっても親。子は大人と言っても親の前ではやはり子だ。

こうして、はじめの決意のとおりに、主人公はこの世に別れを告げることになる。

これは終活を扱っている映画だが、むしろ、久しぶりに集まった3世代にわたる家族の、豊かなコミュニケーションを見せるのが趣旨ではないかとさえ思った。それほどに、厚みがあり変化に富んでいて、羨ましいほどの気遣いと交流がある。散歩のシーンがとりわけいい。

洗練された交わりというもののお手本のような作品でした。

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「HOKUSAI」

格調高い良作。江戸後期の町人文化というと軽めに描かれることが多い印象だが、本作は違う。

芸を極める話と権力からの抑圧に抵抗する話が絡み合いながら進んで、芸術とは何かという本質に迫っている。

若き北斎は、何のために絵を描くのか、という問い掛けに対して、自分にしか描けないオリジナリティという答えを追い求める。

対して、年老いてからの北斎は、「誰にも指図されずに生きる」ことに重きを置いているように描かれている。天保の改革で処罰された柳亭種彦という戯作者との交流に多くの描写を費やしているのが、その表れだ。奢侈禁止が実行される中で、芸一筋と見せながら、その核心では自由な精神を守り抜いたという解釈だろうか。

北斎の心中はわからないが、人物画ではなく風景や庶民の日常生活の描写で名を成したことも、改革の車輪に轢き潰されずに済んだ理由かもしれない。

柳楽優弥と田中泯が演じる北斎は、真面目一筋に描かれていて、知らずに襟を正させられる。

コロナ禍で世の中の不確実性が増している中で、他人に左右されない骨太な生き方を見せてくれる一本でした。

 

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2021.06.13

「Mr.ノーバディ」

いい人になろうと頑張ったけど、善人が馬鹿を見る世の中に堪忍袋の緒が切れて悪人どもをぶちのめしてスカッとするタイプの映画。まあそんだけなんだけど、本作には、暴力装置である実力組織のエリートだった人間が、その力を存分に振るう誘惑に勝てずに爆走するという設定が織り込まれている。世のため人のためというより、暴れたいから暴れる、というアメリカンマッチョな物言い。悪役はいつもどおりロシア人。今回はアフリカ系も入っている。問題を起こしてもどこかの偉い人が後始末するので心おきなく暴れられる。

ということで、スカッとしたい人にはいいかも。

いやまあ、アメリカ怒らせるとただじゃ済まんぞという警告かもしれんけど。

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2021.06.06

「暗黒と神秘の骨 」

NETFLIXオリジナル シーズン1全8話
設定は面白そうなんだけど、複雑で固有名詞を全部は追い切れない。多くの登場人物が、最初はそれぞれの動機付けでバラバラに動いていて散漫な印象だったのが、徐々に物語の核心に向けて吸い寄せられるように集まってくるのが、ちょっと面白い。

検索してみると、こんな解説ページがあって、読んでみると納得。
https://netofuli.com/news-315/
二つの原作をひとつに合体させるという力技の結果なのですね。

コンセプトが功を奏して、異なるストーリーラインが特異な能力を持つ少女を巡って交錯し、めくるめく展開に。魔法を使う人々は、どれも個性的で、各々が表面とは違う内面を持っていて、徐々に種明かしされていくのも、お話の推進力になっている。

西洋風の物語の主役にアジア系の男女をあてているのが、少し取っつきにくい感じを与えているかもしれないけれど、風変りな設定には合っている気もする。慣れればOKでしょうか。

シーズン2の予定もあるそうなので、気長に待つことにしましょう。

 

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