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May 2021

2021.05.31

「クルエラ」

悪役をこんなにカッコよくエキサイティングに人情味溢れるストーリーで描いてしまっていいのか。ルパン一味ですかおまいらは。

ということで傑作です。

まあコロナの影響で映画館で映画を見るのが久しぶりなこともあって、少し感動バイアス多めに掛かっているかもしれませんが。


女性が主役とか、悪役キャラクタの再評価とか、今の流行を取り入れた作品は多いですが、本作はその一群の中でも頭ひとつ抜け出ています。

「ジョーカー」のように絶望的ではない。
「マレフィセント」のように無敵ではない。
「ハーレイ・クイン」のように破綻していない。

本作におけるクルエラ(エステラ)は、強い意志と輝く感性と繊細な気遣いと周到な計画性を持ち合わせた、どちらかというと尊敬に値する人物なのです。

これまでのどんな悪役より魅力的です。職業がファッションデザイナーという設定のお蔭かもしれませんが、全体に尖っていてリズム感があります。そして、職業があるということで、これが社会の一部であるという安心感もあります。

さらに、本作の勧善懲悪的な面を見るなら、クルエラはむしろ悪を懲らしめる側に立っています。悪役映画じゃないですね(笑)。

そしてなにより、本作には陰湿さがありません。悪が嫌われる理由は、所業の犯罪性ではなく、行動の陰湿さに負うところ大だと思うのですが、本作のクルエラにはそれが感じられません。

冷酷さがこのクルエラというキャラクタの特徴だそうですが、それはまだ悪い形では発現していない。心優しい母親の影響が残っています。次作でも、折々にその人間性が顔を出してくれると、とてもいいシリーズになりそうな予感がします。毒を持って毒を制す、それを、強制されてやるのではなく、彼女自身の感性に従って主体的にやっていく、というコンセプト。

本作で倒した相手の悪を、クルエラが受け継いで本物の悪に染まっていくのか、それとも悪の仮面を被った別の何かになっていくのか、今後が楽しみです。

 

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2021.05.23

「クレールの膝」

エリック・ロメールさんの初期の6連作のうちの1本。このコロナ禍で配給が細っているためか、昔の作品を上映しています。デジタルリマスター版ということで映像も悪くない。

元外交官氏と作家の女性との対話が楽しい会話劇かと思うと、そこに少女たちの瑞々しい肢体が織り込まれてきて、眼福、いや目の毒です。若いっていいなあ。この瑞々しさはヌーヴェル・バーグの特徴とされているそうです。

会話劇と青い官能、一見関係の薄い二つの要素が、小説の構想のための実験という設定でつなぎ合わされていて、無理なく消化できています。そして最後に、全てを神の視点で操っているつもりの大人たちの思惑を、若者たちがあっさり覆して終わるのも、ヌーヴェル・バーグらしいといえばそうでしょうか。

いま見ても古くないのがよかったです。

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「アーミー・オブ・ザ・デッド」

真田広之がんばってるな!日本人自虐ギャグをかますくらいに!

ということで、ザック・スナイダーのゾンビ映画です。

冒頭、お話の現状に至るまでの過程を、洒落た映像と音楽で断片的にお送りするあたり、スナイダーらしさがよく出ています。「エンジェルウォーズ」をアメリカンテイストにしたような。

こういうの見ていると、タランティーノをちょっと思い出すのだけど、そういえばこのコロナ禍で、タランティーノ十作品の最後の1本はどうなったんだろうな、など思ってしまいます。

さて本作の方は、もう今風ゾンビ映画そのものですね。

ゾンビ映画というのは、最初はホラー映画として出発したと思いますけど、いまやゾンビをネタにいろいろ語るジャンルになっている感があります。この作品でも、人間側のあれこれが7割といったところでしょうか。まあ、ゾンビ側も知能があったりしてオソロシイですけど。

それにしてもアメリカ人、ゾンビ好きだなと思いますが、その理由がふと分かった気がします。ゾンビは日本でいうところの「〇〇亡者」なのではないか。我々はいつも何かしらの妄念を少しづつ引き摺っているわけで、その妄念に取り込まれてしまう瀬戸際を生き続けているわけです。ふとしたことで向こう側に行ってしまうのも割とよくあって、それでも普通の仮面を被って生活を続けるわけです。

そんな中で登場する人間たちは、現実の世で言えばまあ覚者であると。普通なかなかお目に掛かれないような善や悪を、亡者の群れを前に発現させるわけです。そこにドラマが生まれるという仕掛け。
まあ屁理屈はそれとして、本作はその点ではなかなかよい出来です。

映像は、意図的に被写界深度を極端に浅くとったシーンを多用しています。非現実感を出すための工夫でしょうか。ちょっと面白い技法でした。何かを常に非現実に見せるのは、この監督の真骨頂なのかもしれません。

結局、限定的な核兵器使用でゾンビは完全に滅ぼされたように見えて、その実どこかに飛び火しているのは、今の世のウイルス騒ぎを連想させてタイムリーです。ゾンビ映画の結末はたいがいそうなんでしょうけど。

ということで、エンタメ万歳なザックス・ナイダーらしい1本に仕上がっておりました。

 

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