「えんとつ町のプぺル」
年の初めにふさわしい、挑戦者の気概を語る物語です。勇気づけられる良作。吉本興業、なかなかいいものを作るではありませんか。ちょっと驚きました。
出だしはよくありそうなパターンで、少し退屈な時間になりそうだと思ってしまいますが、途中からぐいぐい良くなっていきます。伏線の張り方と回収が巧みです。特に、行方不明になっている父親がどんな形で物語に関わってくるのか、それがとてもエモーショナル。絶妙です。よくできた落語を聞いているかのよう。
加えて、街の成り立ちを説明するくだりが面白い。なんとこの町をつくったのは経済学者だというのです。その理論は、たいていのものが時間と共に腐って使えなくなるのに対して、貨幣は腐らないことから、その優位性が大きくなりすぎてしまったため、その弊害を避けるために、腐る貨幣を考案して広めた、というものです。ネットで検索してみると、「自由貨幣」「減価する貨幣」といった言葉が出てきます。こういう発想が子供語りに出てくるのはとても珍しいと思います。
その、善意と理想に基づいた町発祥の経緯が、反面、現在の町の閉塞に繋がってしまっているという設定がまたリアルで皮肉が効いています。
ちょっとしたことなのですが、こうした独特の要素がお話を彩って、陳腐な話に陥ることを回避しています。
安定の骨組みと、神宿るディテール。言うことありませんね。